助成金最新コラム
2019.11.15
解雇はしちゃダメなの?
採用は人事業務の中でもパワーを使うポイントですよね。
そんな苦労をして採用した従業員も、いざ勤務実態を見てみると
「勤務態度が悪くて、遅刻や無断欠勤も多めで困ってしまう」
「経歴や保有資格に期待していたけれど、思っていた成果が上がっていない…」
そんな状況もあるのではないでしょうか。そんな時、ふと頭にひらめくのは「解雇」の二文字…。そんな悪魔のささやきが聞こえてきたことはありませんか?
「だめなら解雇して、また新しく雇えばいいじゃない」
さて、そんなに簡単に「解雇」はできるものでしょうか?
順序を踏まないとダメ
きちんとした手順を踏まないと解雇は様々な労務トラブルの種につながります。
従業員へ解雇を告げるその前に!
まずは解雇で抑えておくべき重要な点を確認してみましょう。
解雇の種類について
どうしても従業員を解雇しなければならないとき、客観的、合理的な理由があるかを問われます。そのため、「あなた仕事が遅いから、明日からもう来なくていいよ」と突然従業員に告げることは、客観的、合理的な理由に欠ける、ということになります。
また、ひとくくりに解雇といっても、様々なケースがあります。
1.普通解雇
おそらく最も直面するのはこのパターンでしょう。
仕事をする上での能力に問題がある、勤務態度が悪いといった従業員の解雇の場合は、普通解雇の対象になり得ます。
ですが、その従業員を解雇する理由は客観的、合理的な理由に該当するでしょうか?
そのために大切なのが
- 就業規則等でこういった場合には「解雇しますよ」としっかりと規定し、その内容を周知すること
- 業務にどれほどの支障があるか、他の業務に転換できないか、教育によって改善の見込みがないか、などを踏まえた上で配置の転換を検討する
といった対応策が取れると考えられます。
それでも改善・解決しない場合は解雇の対象になるといえるでしょう。
2.整理解雇
会社の経営が悪化し、止むを得ず人員を削減しなければならない場合に行う「人員削減のための解雇」を指します。
3.懲戒解雇
事業主が会社の秩序を乱した労働者に対して課すことができる制裁罰の一つです。いわゆる「クビ」ということですが、実は懲戒解雇というものは労働者に一生ついて回るもので再就職の時に重大な不利益をもたらします。
対象となり得るのは
- 長期の無断欠席
- 会社の金品横領
- 飲酒運転等の重大事故や交通違反
- 犯罪など法に抵触する行為で逮捕や起訴された場合
などの理由が懲戒解雇にあたります。
解雇に必要な手順とは?
解雇を検討する際に、大切な手順として「解雇予告」があります。
そして労働基準法第20条にはこう定められています。
労働基準法第20条より
企業(使用者)が労働者を解雇するには、正当な理由があっても、少なくとも30日以上前から解雇予告をしなければならない
要するに、解雇するためには30日前に労働者への通知(予告)が必要ということになります。
例えば3月31日付で解雇をする場合は、遅くとも3月1日に解雇予告を行う必要があります。
知ってる?『解雇予告手当』とは
解雇予告をした後の30日間、従業員が従来通り労働した場合は、当然、賃金を支払う必要があります。
この30日を待たずして解雇、という場合は、以下のような対応となります。
1.解雇の予告を行わない場合
予告解雇をせず、即時解雇(当日)の場合は30日分以上の解雇予告手当(平均賃金)を支払う必要があります。
2.解雇日の10日前に予告した場合
30日-10日=20日分の解雇翌手当を支払う必要があります。
3. 解雇予告手当の計算方法
平均賃金を算出します。
平均賃金とは、3ヶ月前から今までの間に支払った給与(ボーナスは除きます)の総額を、その期間の総日数で割った金額です。
(例)
解雇日12月31日。賃金の締切日は毎月15日、支払日は毎月末日とした場合
(引用:厚生労働省/労働基準法関係)
対象者の人が毎月200,000円の賃金をもらっていたとしたら
600,000円÷91日=約6,594円
となりますので、1ヶ月分まるまる支払う必要がある場合は約198,000円を支払う必要が出てきます。
手順を守らないと大変なことに…
客観的、合理的な理由に欠けた解雇を従業員に告げても、その解雇は無効となり、後々トラブルとなって、場合によってはさかのぼって給与の支払いを裁判所に命じられるケースなどもあります。
カッとなってつい、「クビだ!」などと告げてしまうと、結果事業主の負担が増大していくこととなるのです。
そのため、解雇を考える際には、その従業員の問題点を洗い出し、調査や聞き取りを行った上で書面に残しておくこともおすすめします。
解雇を告げるその前に…
「無断欠勤が多い」「勤務態度が悪い」「想定していたスキルと違った」など、見込み違いから発生する雇用トラブルは多くあります。
しかし、何かの縁あって一緒に仕事をする仲間になった従業員を、「解雇の前に打てる手立てはないのかな?」という視点で考えてみませんか?
「無断欠勤してしまうということは、休みたいということを報告する仕組みや、社会人マナーを教える体制が整っていないのでは…」
「勤務態度が悪いという報告は上がってくるけれど、特定のチームで進めているときが多い。人間関係に問題があるのかな?」
「事務ではなく営業に配置換えをすることで、彼のスキルが生きないだろうか?」
悩みのタネだった従業員が、ちょっとした声掛けや工夫で「わが社のエース」になるかもしれませんね。
解雇を行うことは、会社にとっても労働者にとっても大きな負荷がかかる行為です。労働者の生活にも多大な影響を及ぼし、会社にも「解雇した」という履歴が残ります。
それでもどうしても解雇するしかなくなったときは、手順を踏んで、トラブルが起きないように慎重に進めていきましょう。