助成金のノウハウ
2024.04.04
人材開発支援助成金「人材育成支援コース」の申請様式と記入例を解説

こんにちは。
グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
本記事では、人材開発支援助成金「人材育成支援コース」の申請様式と記入例について詳しく解説します。
人材開発を推進するために、助成金活用を検討されている経営者や人事担当者の皆様のために、申請書類の全体像を明確にします。この記事が、研修助成金を活用するための一助となれば幸いです。
本記事では、以下のような内容について解説していきます。
– 申請様式の内容と記入例
– 訓練計画の届出時と支給申請時に必要な書類一式
– よくある失敗とその注意点
助成金専門の社労士事務所であるグロウライフが、日々、助成金申請を代行している知見をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。助成金を活用して、人件費の負担軽減を実現しましょう。
01 人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金は、労働者の職務に関連した専門的な知識と技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。この制度は、労働者の職業訓練や能力開発を支援することでキャリア形成を促し、企業の発展につなげるためのものです。
1.1 人材開発支援助成金「人材育成支援コース」の概要
雇用される労働者に対して、職務に関連した専門的な知識および技能を身につけさせるための訓練や厚生労働省の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を正社員化させるための訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の一部の賃金が助成されます。
1.2 「人材育成支援コース」受給までの流れ
人材育成支援コースの受給までの流れは、以下のようになります。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」
02 計画届出時の申請様式と記入例
受給までの流れからも分かるように、人材開発支援助成金「人材育成支援コース」では、「計画届出時」と「支給申請時」のタイミングで、申請書などのさまざまな書類提出が必要になります。ここでは、計画届出時の申請様式と、記入例や記入方法などについて説明いたします。
以下が、計画届出時の主な必要書類となります。あとは、実施する訓練内容によって異なりますので、手引きなどでご確認ください。
2.1 職業訓練実施計画届
①事業内訓練の場合は事業主が設定した訓練名を、事業外訓練の場合は教育訓練機関が発行しているカリキュラム等と同じ訓練の名称をご記入ください。
②「総訓練時間数」は、昼食等の食事を伴う休憩時間を除いた訓練時間を記載してください。「実訓練時間数」は、「総訓練時間数」から、移動時間・助成対象とならないカリキュラム等の時間を除いた時間数を記載してください。
③訓練コースの内容と助成対象労働者の職務がどのように直接関連するか具体的に記入してください。
④OFF-JTで申請事業主自らが主催・企画する集合形式の訓練であれば「事業内訓練」に、OFF-JTで教育施設や事業主団体が主催する訓練であれば「事業外訓練」にチェックを入れてください。
⑤デジタル人材の育成を目的に行う訓練である場合は、必ずチェックをしてください。
2.2 訓練別の対象者一覧
①まだ採用していない方を訓練の対象にする場合は、採用予定日欄にご記入いただく必要がございます。
②受講回数に関しては、各労働者の現行年度での受講回数(対象訓練の計画届を申請した回数)をご記入ください。労働者1人あたり同年度で3回まで受講できます。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金申請書類(令和5年6月26日~)」
2.3 人材開発支援助成金事前確認書
こちらは、人材開発支援助成金「人材育成支援コース」を利用するにあたっての注意事項が記載されています。すべての項目を熟読し、理解しましょう。疑問点などがある場合には、必ず各都道府県労働局やハローワークに確認し、理解したうえで記入しましょう。
助成金のルールを理解せずに利用し、違反してしまうと不正受給になってしまうので、十分にご注意ください。
2.4 事業所確認票
こちらでは、各申請事業所などの「雇用保険適用事業所番号」などの情報をご記入いただきます。ハローワークより交付される「雇用保険適用事業所設置届(事業主控)」などで確認できますので、間違いのないように記入しましょう。
2.5 労働条件通知書(雇用契約書)
訓練対象者が、雇用保険の被保険者または有期契約労働者等であること、および職務内容が確認できる書類として、「労働条件通知書(雇用契約書)」を提出します。
労働条件通知書は、書式や内容が労働基準法などに適合している必要があります。内容が法律に反する箇所がある場合には、まずは労働環境の整備が必要です。このような場合には、助成金と労務管理の専門家である、社会保険労務士への相談をおすすめします。
2.6 事業内職業能力開発計画
事業内職業能力開発計画は、自社の人材育成の基本的な方針などを記載する計画です。従業員の職業能力開発について、企業の経営者や管理者と従業員が共通の認識を持ち、目標に向かってこれを進めることで効果的な職業能力開発を行うことが可能になり、さらに従業員の自発的な学習・訓練の取組意欲が高まることも期待されます。作成した計画は従業員に周知し、職務に必要な能力や自社の育成方針について共有しましょう。
人材開発支援助成金「人材育成支援コース(人材育成訓練、認定実習併用職業訓練)」では、要件として例示のような記載が必要となります。なお、キャリアコンサルティングを実施する者は、国家資格を有しているキャリアコンサ
ルタントに限らず、労務・人事担当部課長などでも可能です。
2.7 訓練内容を確認するための書類
①実施主体の概要、目的、訓練日ごとのカリキュラム、実施日時、場所が分かる書類が必要です。事前に対象者に配布した訓練の案内、訓練カリキュラムや講義で使用するテキストなどを提出することになります。
②OFF-JTの実施場所が自社内の場合、通常の事業活動と区別して実施することが確認できる見取図についても提出してください。
03 支給申請時の申請様式と記入例
支給申請時の申請様式と、記入例や記入方法などについて説明いたします。
以下が、支給申請時の主な必要書類となります。あとは、実施する訓練内容によって異なりますので、手引きなどでご確認ください。
3.1 支給要件確認申立書
「支給要件確認申立書」は、助成金全般に共通する様式になります。
助成金のルールをすべて守っているか、細かく確認するものになりますので、必ず内容を理解したうえでチェック・記入しましょう。違反すると助成金が貰えないだけでなく、罰則が科せられることがありますので、十分にご注意ください。
3.2 支払方法・受取人住所届
新規に助成金を受けようとする場合または登録済の口座番号に変更がある場合は、当該届出提出時に、原則通帳の写し等支払い口座番号が確認できる書類を添えて提出します。以前に提出したことがあり、変更がない場合には不要です。
3.3 人材開発支援助成金支給申請書
訓練が修了した日の翌日から起算して2ヵ月以内に、事業所が所在する都道府県の労働局へ提出が必要です。基本的に、事業所の基本情報に関することを記載します。
3.4 賃金助成およびOJT実施助成の内訳
①1人1職業訓練実施計画あたり1,200時間が限度です。ただし、専門実践教育訓練を受ける場合は1,600時間が限度となります。
②下記のいずれかの理由により、OJTを実施することができなくなり、「OJTの受講時間数」が「総訓練時間数のうちOJTの時間数」の80%を満たさない場合は、実際の受講時間数をもとにOJT実施助成額を算出してください。
・労働者の責めに帰するべき理由による解雇
・労働者の都合による退職、事業主の責めによらない病気、怪我等
・労働者の死亡
・事業主または労働者のいずれの責めにも帰することができない天災等のやむを得ない理由
③この様式は、賃金助成額およびOJT実施助成額の算定をする場合の様式となります。eラーニングによる訓練または通信制による訓練とスクーリングを組み合わせて実施した場合は、スクーリング部分の時間数に基づき本様式を作成し、提出してください。なお、次の訓練は、賃金助成の対象とならないため、本様式の提出は不要です。
・eラーニングによる訓練
・通信制による訓練
・育児休業中の訓練
3.5 経費助成の内訳
①認定実習併用職業訓練および有期実習型訓練において、付加的にeラーニングによる訓練および通信制による訓練を実施した場合は、認定実習併用職業訓練および有期実習型訓練の部分と付加的に実施するeラーニングによる訓練および通信制による訓練の部分で経費助成限度額が異なるため、本様式を分けて提出してください。
②6(1)欄では、事業内訓練に係る経費を算出します。事業内訓練で助成対象となる経費は、①部外講師の謝金、②部外講師の旅費、③施設・設備の借上げ費、④教科書・教材費、⑤訓練コースの開発費です。
一部の労働者について申請をする場合は、①から⑤までの合計額(事業内訓練経費計)に、「助成対象労働者数÷訓練コースの総受講者数」により得た割合を乗じて、助成対象労働者分の事業内訓練経費計を算出してください。また、認定実習併用職業訓練については、事業主が自ら運営する認定職業訓練により訓練を実施する場合のみ助成対象となる経費を記載してください。
3.6 OFF-JT実施状況報告書
訓練方式によって、提出様式が異なりますのでご注意ください。
事業主団体等による訓練 | 訓練実施結果報告書(事業主団体・共同事業主用)(様式第8-2号) |
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eラーニングによる訓練 | eラーニング訓練実施結果報告書(様式第8-3号) |
通信制による訓練 | 通信制訓練実施結果報告書(様式第8-4号) |
3.7 受講費用の支払いを確認するための書類
申請事業主が、訓練にかかる経費を支給申請日までに全て負担していることを確認するための書類で、「領収書または振込通知書など」が必要です。領収書の場合は、併せて、総勘定元帳または現金出納帳の写し等の提出も必要です。
3.8 賃金台帳・出勤簿・シフト表など
事業主が実施した、訓練実施期間中の「所定労働日および所定労働時間」の確認書類として、「就業規則・
賃金規定・休日カレンダー・シフト表など」が必要です。内容が、労働基準法などに適合している必要がありますので、十分にご注意ください。
04 よくある失敗とその注意点|人材開発支援助成金
4.1 訓練開始1カ月前までの届出は必須
前述したように、訓練開始から起算して1カ月前までに職業訓練実施計画を届出しなければ、その研修は助成対象と見なされませんので、必ず期限までに計画の届出を実施するようにしてください。
4.2 訓練の実施目的が要件を満たしていない
人材開発支援助成金の対象となる訓練は、職務に直結する知識や技術を習得するための訓練に限られています。その為、審査段階で訓練の全部・もしくは一部が助成対象とならない訓練と見なされてしまうことがあります。
人材開発支援助成金の支給要件をクリアするには、助成対象となるOff-JTを最低でも10時間以上実施する必要がありますが、実施した訓練の一部が助成対象と認められなかった場合、実訓練時間数を削られてしまいますので、状況によっては申請そのものが不支給になってしまうこともあります。このような状況を回避するためにも、はじめて助成金を申請するカリキュラムの場合は、特に注意して進める必要があります。
助成対象になるか自信がない場合は、事前に労働局で内容を確認してもらったり、審査段階で一部を削られたとしても要件をクリアできるような構成にしておくなどの対策を講じられることをおススメします。
4.3 訓練内容と訓練対象者のミスマッチ
人材開発支援助成金では、「支給実績のある訓練カリキュラム」でも不支給になるケースがありますので、くれぐれもご注意ください。
どのような状況で不支給になってしまうかというと、訓練内容と訓練対象者のミスマッチが起こっている状況です。例えば、管理者層向けのマネジメント研修を入社1年目の新人が受講するような場合、一般的には説得力がありません。仮に、対象者が本当にマネジメント業務に従事しているのであれば、必ずしも不支給になるとは言い切れませんが、どのような業務に従事しているかが、雇用契約書などで明確に確認できる必要があります。
労働局は、職業訓練実施計画届の提出時に添付する雇用契約書(労働条件通知書)などで、ミスマッチが発生していないか確認してきますので、適正な資料を提出するようにしてください。
05 まとめ|人材開発支援助成金
この記事では、人材開発支援助成金「人材育成支援コース」について詳しく解説しました。以下のよくある失敗と注意点のところは、得に重要なポイントなので、是非、参考にしてください。
– 訓練開始1カ月前までの届出は必須
– 訓練の実施目的が要件を満たしていない
– 訓練内容と訓練対象者のミスマッチ
人材開発助成金の活用は、経営者や人事担当者の方にとって大きなチャンスです。国からの返済不要の支援金を受けることで、人材育成をより充実させることが可能です。しかし、人材開発助成金の申請は、年々難易度が高まっており、専門家のサポートが不可欠な取り組みとなってきています。グロウライフ社会保険労務士法人では、助成金の無料相談を随時、受け付けておりますので、ぜひ、お困りの方は無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けてみてください。