助成金のノウハウ
2023.07.29
キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A|あなたの疑問をプロが解決
こんにちは。
グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
本記事では、キャリアアップ助成金正社員化コースの良くある質問について、Q&A形式で詳しく解説していきます。これから申請を検討されている方や、制度の変更について理解を深めたいと思っている皆様へ向けた内容となっております。この記事では、以下のポイントをわかりやすく解説します。
1. キャリアアップ助成金正社員化コースの概要と流れ
2. キャリアアップ計画書に関するQ&A
3. 令和4年4月の変更に関するQ&A
4. 昇給・賞与・退職金に関するQ&A
助成金専門の社労士事務所であるグロウライフが、日々、助成金申請を代行している知見をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。助成金を活用して、人件費の負担軽減を実現しましょう。
01 キャリアアップ助成金 正社員化コースとは?
「キャリアアップ助成金正社員化コース」は、非正規雇用の労働者に対して正社員化を促進すべく、国が企業に対して助成金を支給する制度です。
1.1 正社員化コースの概要
「有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者」などの非正規雇用労働者を抱える企業が、正社員化をすることによって受けられるものであり、労働者の社会的保障の強化を目的としています。就業規則に類する規定に基づき、有期雇用従業員を正社員に転換した場合に助成金が支給されます。
1)正社員化コースの支給額
①支給額(対象者1人あたりの助成額は以下のようになります)
企業規模/正社員になる前の雇用形態 | 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 |
中小企業 | 570,000円 | 285,000円 |
大企業 | 427,500円 | 213,750円 |
②加算額(対象者1人あたりの加算額は以下のようになります)
内容 | 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 |
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する | 285,000円 | 285,000円 |
対象者が母子家庭の母または父子家庭の父 | 95,000円 | 47,500円 |
人材開発支援助成金の訓練終了後に正社員として雇用する | 95,000円 | 47,500円 |
※うち自発的職業能力開発訓練または定額制の訓練終了後に正社員として雇用する | 110,000円 | 55,000円 |
「多様な正社員化」制度を新たに規定し当該雇用区分に転換した(1事業所1回のみ) | 95,000円 | 95,000円 |
2)正社員化コースの要件
①全コース共通の要件
●雇用保険に加入している
●事業所ごとにキャリアアップ管理者を設置している
●キャリアアップ計画書の認定を受けている
●キャリアアップ助成金のルール通りに書類などを整備している
●キャリアアップ計画期間内に正社員化などの施策を実施した
②正社員化コース特有の要件
●就業規則等に正社員化等の転換制度を規定して労働基準監督署に届出している
●届出した規定に基づき正社員化した
●対象労働者を6ヵ月以上継続雇用し賃金も支払っている
●正社員化前の6ヵ月間より賃金を3%以上アップさせた
●労働法規や正社員化コースのルールに違反していない
1.2 計画の届出から支給申請までの流れ
参考資料:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」
02 キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A(令和5年)
キャリアアップ助成金「正社員化コース」に関する、質問と回答をまとめたQ&A(令和5年度版)です。
このQ&Aでは、「令和5年4月1日以降の変更点」や「キャリアアップ計画」「正社員の定義」「非正規雇用労働者の定義」「試用期間の考え方」など、さまざまな側面について、質問とその回答が例示されています。これらの情報を参考に、自社のキャリアアップ助成金対策をしていただければ幸いです。
参考資料:厚生労働省「キャリアアップ助成金Q&A(令和5年度)」
2.1 令和4年4月1日以降の変更点|キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A
質問1) キャリアアップ助成金の支給要件や助成メニューなどについて、令和5年4/1からの変更点を教えてください。 |
答え1) ■令和5年4/1以降の取り組みにおいては、生産性要件を満たした場合の加算措置が廃止されました。 ■キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の訓練を活用して正社員化を実現する際には、対象となる訓練の範囲が統合・拡充されることになりました。 ■人材開発支援助成金において、特定の訓練を受けた労働者を正社員化する場合に限り、人材開発支援助成金の計画届とキャリアアップ計画書を一本化いたします。 ■有期実習型訓練修了者について、「賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を受けている必要があるとして要件を変更しました。 |
質問2) 令和5年度以降、段階的に進められる予定の雇用関係助成金の電子申請は、キャリアアップ助成金にも適用されるのでしょうか。 |
答え2) キャリアアップ助成金に関しても、「雇用関係助成金ポータル」(参考:雇用関係助成金を電子申請しませんか?)にて、順次、電子申請が行える予定です。具体的には、「正社員化コース」は令和5年4/3から、その他のコースについては、令和5年6/1から電子申請が可能となる予定です。 |
質問3) キャリアアップ計画の作成方法において、紙申請と電子申請の間に違いがございますか。 |
答え3) 電子申請においては、キャリアアップ計画は実施するコースごとに個別に策定することが必要です。※キャリアアップ計画を複数のコースで立案する場合は、コースごとに異なる計画期間を設定できます。さらに、各コースには独自のキャリアアップ管理者を任命することも可能です。以前と同様に、全てのコースのキャリアアップ管理者を同一人物にすることも問題ありません。 |
質問4) 過去に提出した有効な紙のキャリアアップ計画書がございますが、申請手続きを電子申請で行うことは可能でしょうか。 |
答え4) 支給申請を電子申請で行う場合には、事前にキャリアアップ計画の届出を『電子』にて行う必要がございます。 |
2.2 キャリアアップ計画|キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A
質問1) キャリアアップ管理者の選定においては、どのような要件を備えた方を選任すべきでしょうか。 |
答え1) 当該企業の従業員の中で、有期雇用労働者などのキャリアアップに関する専門的な知識と経験を有する方、もしくは事業主や役員がキャリアアップの管理者として選任できます。 |
質問2) 1人のキャリアアップ管理者が、複数の事業所でキャリアアップ管理者の役割を兼務することは可能でしょうか。 |
答え2) キャリアアップ管理者は、雇用保険適用事業所ごとに必要とされるため、異なる適用事業所で兼務することは許可されていません。もし複数の事業所で兼務していた場合、そのうちの片方のみが有効となります。 |
質問3) 事業主や役員が複数の事業所でキャリアアップ管理者のポジションを同時に兼務することは可能でしょうか。 |
答え3) 各々の雇用保険適用事業所で、専任のキャリアアップ管理者を配置する必要があります。したがって、事業主であっても、1つの事業所のみでしか、キャリアアップ管理者になることが認められていません。(異なる法人の事業所であっても、兼務は認められません) |
質問4) 事業所には有期雇用労働者のみしか在籍しておらず、店長も有期雇用労働者となっております。有期雇用労働者の方でもキャリアアップ管理者として選任することは可能でしょうか。 |
答え4) 有期雇用労働者等であっても、適格性を備えた方であれば、キャリアアップ管理者になり役割を果たすことは可能です。 |
質問5) キャリアアップ管理者と使用者代表を同時に務めることは可能でしょうか。 |
答え5) キャリアアップ管理者と使用者代表を同時に務めることは可能です。その他の役職との兼任できるかどうかについては、下記の表を参考にしてください。 |
質問6) 従業員の中から労働者代表として選ばれるには、どのような条件があるのでしょうか? |
答え6) 労働組合や労働者の過半数を必ずしも代表する必要はありませんが、適用事業所における非正規雇用労働者を含む全ての労働者を代表することが必要です。労働者代表者は、適用事業所単位で選出されるべきであり、当然ながら労働者代表者と使用者代表者は異なる個人でなければなりません。また、雇用保険被保険者であることは不要ですが、労働者の資格を持っていない場合には労働者代表者にはなれません。 |
質問7) キャリアアップ計画と異なる取り組みを実施した場合の、取り扱いについてご教示いただけますか。 |
答え7) キャリアアップ計画書(または変更届)において予定されていたコースの中で、結果的には異なる施策が実施された場合は、支給の対象となります。しかし、もともとコースとして予定しておらず、計画に含まれていなかった施策については、支給の対象外となります。 |
2.3 正社員の定義|キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A
質問1) 「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要とは、具体的にどのような条件を満たす必要があるのでしょうか。 |
答え1) キャリアアップ助成金の対象となる正社員には、長期雇用に基づく労働条件が適用されていることが求められます。具体的には、申請事業所の正社員には、就業規則または労働協約などに基づき、以下の条件が適用されている必要があります。 ・賞与または退職金の制度のいずれかを適用 ・昇給を適用 |
質問2) 賞与、退職金、および昇給に関する規定について、就業規則等をどのように記載すればよいのでしょうか。 |
答え2) 「賞与または退職金の制度」および「昇給」に関して、正社員に適用されることが具体的に判断できるように、就業規則などで明確に規定する必要があります。退職金制度については、労働基準法に基づき、適用対象労働者の範囲、退職金の支給要件、計算および支払い方法、支払い時期などが具体的に記載される必要があります。また、具体的な実施時期なども規定されることが望ましいでしょう。なお、これらの制度に関しては、ケースに応じて、運用状況を確認する場合もございますのでご了承ください。 |
質問3) 正規雇用への移行後の6ヵ月間において、賞与や昇給の実績が確認されていない場合でも、支給の対象となるのでしょうか。 |
答え3) 正社員として雇用された場合、就業規則に「賞与または退職金制度」と「昇給」の規定があれば、それに基づいて支給の対象となります。ただし、就業規則が適切に実施されていない場合には、合理的な説明を求めることがあります。(例えば、規定されているはずの6月の賞与が支給されないなど)また、転換後すぐに支給が期待できない制度であっても差別的な扱いではなく、正社員として雇用された者と同じ待遇であることが規定されていれば、支給の対象となり得ます。(例えば勤続1年以上の従業員にのみ賞与が支給されるなど) |
質問4) 天災事変その他の要因により、経営の見通しが困難です。もし、賞与に関する規定が「原則として支給するが、業績によっては支給しないことがある」としている場合、支給の対象となるでしょうか。 |
答え4) 就業規則や関連規定において、賞与制度が明確に規定されている場合でも、次のように記載されているケースがございます。「賞与は通常支給されますが、業績によっては支給されない場合があります」のような表現があっても、不支給という単純な判断は行われません。一方で、「賞与は原則支給されませんが、業績によっては支給される場合があります」や「賞与の支給は会社の業績によります」など、賞与の支給に関して明確さを欠いた表現がある場合には支給対象外となる可能性があります。 |
質問5) 多様な正社員においても、「賞与や退職金制度」の適用、さらには「昇給」の適応が求められるでしょうか。 |
2 |
質問6) 昇給に関する規定(年に1度賃金を見直すなど)や降給の可能性のある規定は、「昇給のある労働条件を適用される正規雇用従業員」の一環として考えることができますか。 |
答え6) 毎年必ず昇給するのではなく、基本給の据え置きや降給があることを示唆しているケースでは、就業規則等に具体的な基準やルールが明示されている必要があります。これらがない場合には、助成金は支給されません。 |
質問7) 昇給の規定について「随時」となっているケースでは、支給対象となるのでしょうか。 |
答え7) このようなケースでは、規定において「随時」となっていることだけで対象外とはなりません。しかし、給料が据え置かれ降給される可能性がない場合であっても、客観的な昇給基準やその他のルールを設けることが望ましいものとされます。 |
質問8) 「決算賞与」というのは、正社員の「賞与」の一形態と言えますか。 |
答え8) 決算賞与のように企業の業績に応じて支給される場合、定義上、正社員としての賞与の要件を満たしません。賞与とは、通常、労働者の勤務成績に基づいて定期的または不定期に算定・支給される手当のことを指します。 |
質問9) 賞与の支給月や回数を具体的に記載することができない場合は、正社員の「賞与」の範疇に該当しないものとなるのでしょうか。 |
答え9) 支給時期などが明確に記載できない場合には、支給の原則性を保つために、合理的な説明を求める場合があります。また、基本的には支給されることが明確に定められていない場合には、正規の従業員に適用される「賞与」の対象とは認められません。ただし、「通常の給与に加えて、年に2回の支給を原則とし、ただし業績により支給されない場合がある」といった規定であれば対象となることがあります。 |
2.4 非正規雇用労働者の定義|キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A
質問1) 「賃金の額または計算方法が正社員とは異なる就業規則」に関して、具体的に説明してください。 |
答え1) 基本給、ボーナス、退職給付金、諸手当などにおいて、少なくとも1つ以上の制度で正規雇用労働者と異なる賃金の額や計算方法が明示的に規定されている場合、該当制度に基づき支給が可能となります。この規定には、基本給の額やボーナスの有無なども含まれます。 |
質問2) 有期雇用労働者を正社員へ転換させる際の注意点はありますか。 |
答え2) 有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)に移行する際には、就業規則などに「契約期間の明示」が義務付けられております。もし契約期間が明示されていない場合、雇用契約書上の有期雇用労働者であっても、無期雇用労働者として扱われることになりますので、ご注意ください。 |
質問3) 正社員と非正規労働者を区別し、労働条件に関する規則を明確に示した就業規則が存在しません。このような場合、助成金の対象となるでしょうか。 |
答え3) この場合、「従業員の労働条件が正規雇用者と異なる場合」の適用状況が確認できないため、支給の対象外となります。ただし、例えば「契約社員やパート労働者の労働条件に別途規定する」といった条文により、非正規雇用者の雇用形態が別途規定されている場合や、正規雇用者と非正規雇用者の労働条件が一体となっている場合であっても「正規雇用者」「契約社員」「パート」などが明確に区別されている条文が存在する場合は非正規雇用者を「非正規」とみなし支給の対象とすることがあります。「従業員の労働条件が正規雇用者と異なる」などの要件も併せて満たしている必要があります。 |
質問4) 就業規則には、「個別の労働条件通知書によって規定される」と明記されており、正社員とは異なる雇用区分に属する従業員として、賃金の額や計算方法が定められている雇用契約を結んでいる場合においても支給対象となるでしょうか。 |
答え4) 就業規則などにより、正規雇用労働者と非正規雇用労働者間の賃金の額や計算方法に関する違いが明確に定められていない場合は、助成金の対象外となります。 |
質問5) 派遣労働者の直接雇用の場合および有期実習型訓練修了者も「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則」の適用を6ヵ月受けていることが必要ですか。 |
答え5) 派遣労働者に関しては必要ありません。しかしながら、有期実習型訓練修了者については、訓練期間や転換時期によって、6ヵ月間の適用が必ずしも可能ではない場合もあることに留意してください。ただし、有期雇用労働者として雇用されるまでの期間では、適用を受ける必要があります。 |
質問6) 就業規則によって定められる給与形態(時給、日給、月給)が正規雇用労働者と非正規雇用労働者で相違する場合、「賃金の算定方法が異なる」に当てはまるでしょうか。 |
答え6) 該当いたします。ただし、適用される就業規則等の規定に違いがあったとしても、実際には転換前後で従業員の雇用条件に一切の変化がない場合、支給の対象とはなりません。 |
質問7) 賞与に関して、正規雇用労働者には「通常は支給する」と明記された規則がありますが、非正規雇用労働者には支給がなく、賞与の規定が存在しないため、関連する規定そのものが欠けています。このケースでも、「正規雇用労働者と比べて賃金の額や計算方法が異なる就業規則が適用されている」とみなされる可能性があるでしょうか。 |
答え7) 当該する可能性があります。賞与以外でも退職手当や諸手当など、同様に扱われることがありますが、非正規雇用労働者には支給されない(単純な規定の抜け漏れではない)ことについて、確認を求めることがあります。 |
2.5 試用期間の考え方|キャリアアップ助成金 正社員化コース Q&A
質問) 正社員転換後に一定期間試用期間を設けています。支給対象になりますか。 |
答え) 正社員待遇の有無に関係なく、正社員への転換後に試用期間を導入している場合、その期間は正社員とみなされません。試用期間中は非正規雇用(無期雇用)とみなされるため、転換の申請が「有期契約→正規雇用」であっても、「無期雇用→正規雇用」の申請として受け付け、審査を行い、適切な支給額を決定することとなります。申請者が中小企業の場合には、「有期→正規」の助成金額は1人57万円、「無期→正規」の助成金額は1人28.5万円と、大幅に減額してしまいますので十分にご注意ください。※正社員転換を希望する方の適性チェックは、一般的には転換前および転換時に実施し、外部採用時と同様の試用期間の設定は行わないことが推奨されております。 |
03 まとめ
この記事では、キャリアアップ助成金正社員化コースの良くある質問をとりまとめ、令和5年の変更点/キャリアアップ計画の詳細/正社員及び非正規雇用労働者の定義/試用期間の取り扱いなどについて、Q&A形式で詳しく解説しました。
返済不要の国からの支援金であるキャリアアップ助成金は、企業の成長と従業員の雇用の安定に大いに寄与します。積極的にこの制度を利用し、正社員化の取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。
キャリアアップ助成金の申請は、年々難易度が高まっており、専門家のサポートが不可欠な取り組みとなってきています。グロウライフ社会保険労務士法人では、助成金の無料相談を随時、受け付けておりますので、ぜひ、お困りの方は無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けてみてください。
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