助成金のノウハウ
2023.07.11
キャリアアップ助成金だけじゃない!正社員雇用を支援する助成金9選
こんにちは。
グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
本記事では、正社員雇用のための助成金について、その種類と活用方法を詳しく解説します。
現在、正社員の雇用に積極的に取り組みたい事業主の皆様にとって、人件費の高騰による負担増は、大きな問題となっていると思います。この問題を解消する手段として、助成金の活用を検討されている事業主の方は少なくないのではないでしょうか。しかし、助成金の種類は多岐に渡り、どれが自社に適したものなのか、またどう活用すれば良いのかがわかりづらいという声も多く聞かれます。
そこで本記事では、以下のポイントを特に詳しく解説します。
1. 雇用関係助成金の基本的な理解
2. 雇用助成金の受給条件
3. ハローワーク経由の雇用で受給できる助成金の解説
4. 採用ルートに関係なく受給できる助成金の解説
5. 障害者雇用に特化した助成金の解説
助成金専門の社労士事務所であるグロウライフが、日々、助成金申請を代行している知見をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。助成金を活用して、人件費の負担軽減を実現しましょう。
01 雇用関係助成金とは?
雇用関係助成金とは、厚生労働省が管轄する、人材の雇用に関する要件を満たすことで受け取ることができる支援金のことです。ここでは、雇用関係助成金の基本的な概要と、助成金の特性とメリットについて解説します。
1.1. 雇用関係助成金の基本的な理解
雇用関係助成金の主な目的は、労働者の雇用状況を安定化させることです。具体的には、失業の予防、雇用機会の拡大、障害者の雇用、労働者の能力開発などを促進することを目指しています。一般的な助成金の対象は、新規事業における人材の雇用、障害者の雇用支援、人材の育成、介護・育児休暇制度の拡充などがあります。
1.2. 返済不要!助成金の特性とメリット
助成金は、雇用保険に加入している事業主が受け取ることができる、返済不要のお金です。助成金は国(主に厚生労働省)から支給され、雇用や定年延長、従業員の研修や教育など、事業主が行った取り組みに対して支援を行います。助成金は一定の要件を満たし申請を行えば、基本的には受給できます。受け取った助成金は返す必要がなく、雑収入として取り扱われます。
助成金のメリットは、まず返済不要という点です。金融機関からの借入に頼らずとも、自社の労働環境や経営状況を改善できます。さらに、助成金受給には雇用保険の加入や勤怠管理など、組織制度の整備が必要です。助成金を申請することで、会社の制度を整えるきっかけとなり、労働環境の改善や生産性の向上につながるでしょう。助成金は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で特に注目されています。雇用調整助成金などの雇用関係の助成金を申請・受給する事業主も増えています。
ただし、助成金の申請は、種類ごとに窓口が異なるため事前に調査が必要です。助成金の申請方法や必要書類については、ハローワークや労働局の助成金事務センターなどにご相談ください。助成金を上手に活用することで、経営の安定化を図り、成長を促進することが可能です。
参考資料:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」
02 雇用助成金の受給条件
雇用助成金を受給するためには、「雇用保険適用事業所の事業主であること」や「労働基準法など労働関係法令を遵守すること」、「支給のための審査に協力して必要書類を整備すること」などの条件を満たすことが必要です。そのうえで、決められた期間内に申請を行うことで助成金を受給できるのです。
2.1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
雇用助成金の財源は、主に雇用保険などによって提供されるため、雇用保険(労働保険)への加入が受給の基本条件となります。労働保険には雇用保険と労災保険が含まれており、労働者を1人でも雇用する場合には原則として適用されます。雇用保険の加入の条件には、週の所定労働時間が20時間以上であることや、少なくとも31日間以上の雇用見込みなどがあります。アルバイトやパートタイムの雇用形態に関わらず、これらの要件を満たす場合には加入が必要です。具体的な加入手続きは、ハローワークなどで相談できます。
参考資料:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
2.2. 労働基準法など労働関係法令の遵守
雇用助成金を受給するには、国や自治体などの支給元によって基準が異なりますが、労働基準法などの労働関係法令を遵守していることが必要です。基本的に助成金自体が、労働者の雇用状況の安定や改善のための制度になりますので、労働者を保護するためにある労働関係法令を守ることは、必須事項といえます。
もし法律に違反している場合や、以前に助成金を不正に受け取ったことがある場合、または労働保険料を納付していない場合などは、受給できない可能性があります。さらに、反社会的勢力と関係がないことなどの要件もありますので、しっかりと確認して不正な申請にならないよう注意しましょう。
2.3. 受給審査に協力し、必要な書類を整備
雇用助成金を受けるには、支給要件として審査の協力が求められます。具体的には、労働局による実地調査や支給・不支給の判断に必要な書類(就業規則、出勤簿、賃金台帳など)の確認が行われます。労働局からこれらの調査や書類の提出を求められた場合には、迅速に対応する必要があります。
雇用関係助成金を受給するためには、申請書類の作成や整備とともに、一定期間の保管も必要です。また、申請の必要書類や、労働者に関する書類はすべて、労働関係法令などのルールに沿って作成する必要があります。
助成金は条件さえ満たしていれば基本的に支給されるものになりますが、労働者に関わる書類(出勤簿、賃金台帳、雇用契約書など)をルール通りに作成する必要があります。法律的知識に詳しいか、專門の部署がある場合以外は、社会保険労務士などに相談することをおすすめします。
2.4. 申請期間内に申請を行う
雇用助成金については、助成金ごとに明確な申請期間が設定されており、期限内に提出する必要がございます。助成金は、申請に必要な書類が数多くありますので、準備には予想以上の時間がかかる可能性があります。そのため、申請の際にはこれを考慮していただき、早めの提出を心がけましょう。また、申請過程で不備が指摘される可能性もございますので、早めの提出により、十分な審査期間を確保することが重要です。
03 ハローワーク経由の雇用で受給できる助成金3選
ハローワーク経由の雇用で受給できる助成金として、「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」の3点について概要をご紹介します。厚生労働省が配布している公式リーフレットや手引を参考に、表や画像もまじえて分かりやすく説明します。
3.1. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
「トライアル雇用」は、職業経験の不足などから就職が困難な求職者等を原則3ヵ月間試行雇用することにより、その適性や能力を見極め、期間の定めのない雇用への移行のきっかけとしていただくことを目的とした制度です。労働者の適性を確認した上で無期雇用へ移行できるため、ミスマッチを防ぐことができます。
参考資料:厚生労働省「トライアル雇用助成金のご案内」
3.2. 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」は、雇用情勢の厳しい地域等で、事業所の設置・整備あるいは創業に伴い、地域の求職者等を雇い入れた事業主に対して支給する助成金です。
雇用情勢の厳しい地域などで、事前に計画書を提出した上で事業所の設置・整備を行い、対象労働者を3人(創業の場合は2人)以上雇い入れた事業主が対象です。
参考資料:厚生労働省「地域雇用開発助成金 地域雇用開発コースのご案内」
3.3. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
「高年齢者・障害者・母子家庭の母」などの就職困難者を、ハローワークや民間の職業紹介事業者などの職業紹介により、継続雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、助成金を支給します。まずは求人の提出が必要です。詳細は労働局またはハローワークへお問い合わせください。
参考資料:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)のご案内」
04 ハローワーク経由の雇用でなくても受給できる助成金3選
つづきまして、ハローワーク経由の雇用でなくても受給できる助成金として「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」の3つをご紹介します。「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」については、別の記事で詳しく解説していますので、よろしければご覧ください。
4.1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)
キャリアアップ助成金とは「有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者」といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。労働者の意欲、能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保するために、ぜひこの助成金制度をご活用ください。
参考資料:厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」
4.2. 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
「中途採用等支援助成金」は、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用の拡大を図る事業主に対して助成するものです。助成対象となる「中途採用の拡大」と「45歳以上の中途採用率の拡大」の助成額は以下のとおりです。また、下記に加えて常時雇用する労働者の数が300人を超える事業主は、中途採用率を公表していることも助成対象の要件となります。
参考資料:厚生労働省「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)をご活用ください」
4.3. 産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)
「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」は、新型コロナウイルス感染症の影響等で事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、新たな事業への進出等の事業再構築を行うために、当該事業再構築に必要な新たな人材の円滑な受入れを支援するものです。
参考資料:厚生労働省「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」を4月1日に創設しました」
05 障害者の雇用に関連する助成金3選
ここでは、障害者の雇用に関連する助成金として「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)」「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」の3つをご紹介します。
日本では障害者を雇用することが法律で義務付けられており、その際には法定雇用率をクリアする必要があります。法定雇用率とは障害者雇用の目標比率のことで、これを下回ると障害者雇用調整金を支払うことになりますが、法定雇用率を上回ると障害者雇用納付金制度に基づく調整金を受け取れます。
調整金や助成金を上手に活用することで、障害者を雇用する企業にとっては経済的負担を軽減し、障害者自身も自立した生活を送るための一助となることが期待されています。
5.1. トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
「障害者トライアル雇用」は、障害者を原則3ヵ月間試行雇用することで、適性や能力を見極め、継続雇用のきっかけとしていただくことを目的とした制度です。労働者の適性を確認した上で継続雇用へ移行することができ、障害者雇用への不安を解消できます。
1)助成金の支給額
■対象者1人当たり、月額最大4万円(最長3ヵ月間)
障害者トライアル雇用求人を事前にハローワーク等に提出し、これらの紹介によって対象者を原則3ヵ月の有期雇用で雇い入れ、一定の要件を満たした場合に助成金を受けることができます。
■精神障害者を雇用する場合、月額最大8万円(最大8万円✕3ヵ月、その後4万円✕3ヵ月)
精神障害者を雇用する場合は、月額最大8万円の助成金を受けることができます。また、精神障害者は原則6~12ヵ月間のトライアル雇用期間を設けることができます。ただし、助成金の支給対象期間は6ヵ月間に限ります。
2)「障害者トライアル雇用」の対象者
「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定める障害者に該当する方が対象で、障害の原因や障害の種類は問いません。次のいずれかの要件を満たし、障害者トライアル雇用を希望した方が対象となります。
①紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
②紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
③紹介日の前日時点で、離職している期間が6ヵ月を超えている
※重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の方は上記①~③の要件を満たさなくても対象となります。
参考資料:厚生労働省「「障害者トライアル雇用」のご案内」
5.2. 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」は、障害者手帳を持たない発達障害や難病のある方を雇い入れる事業主に対して助成し、発達障害や難病のある方の雇用と職場定着を促進するためのものです。発達障害や難病のある方を新たに雇い入れた事業主に助成金を支給します。
参考資料:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」のご案内
5.3. キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)とは、障害のある有期雇用労働者等を正規雇用労働者等(勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員を含む)へ転換した事業主に対して助成するものであり、より安定度の高い雇用形態への転換等を通じた障害者の職場定着を目的としています。
参考資料:厚生労働省「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)のご案内」
06 企業規模による受給金額の違い
雇用助成金は、労働者の雇用維持や再就職を支援するために提供される助成金です。企業の規模(中小企業と大企業など)に応じて、助成金の受給金額が異なることがあります。この記事で紹介しました助成金の大半も、中小企業と中小企業以外(大企業など)で受給金額が違いますので、再度ご確認ください。
このような差異は、企業の規模に応じた労働市場や経済の実情を考慮して導入されています。企業規模による受給金額の違いは、公平な条件で助成金を実施するための仕組みです。労働者と企業の両方にとって公正な支援が行われるように、助成金の適用条件や金額は適切に設定されています。
助成金制度は、雇用環境の安定や経済の活性化に寄与する重要な手段であり、企業の持続的な雇用の維持や労働者の再就職支援に役立っています。企業は、これらの助成金制度を活用することで、雇用関係の安定に寄与できるとともに、労働者の雇用確保や再就職支援に積極的に取り組むことが求められています。
07 助成金のプロから見た申請時の注意点
申請時の注意点を、助成金のプロである社会保険労務士の視点からお伝えします。
まず、助成金は厚生労働省が管掌し、様々な種類のものが存在します。助成金の種類によって申請条件や必要な書類が異なるため、詳細な情報を事前に確認することが重要です。助成金の種類や申請期間、申請対象者の範囲などをしっかり把握しましょう。
また、申請書類の作成においては、必要な情報を正確かつ詳細に記入することが必要です。書類不備や誤った情報があると、申請が遅れ却下される可能性があります。そしてこれらの書類は、労働関係法令や助成金のルール通りに作成しなければなりません。この点がもっとも難しくなりますので、十分に確認した上で作成しましょう。
さらに、申請書類の提出期限を守ることも重要です。助成金の申請期間は厳密に決められており、期限を過ぎると貰えなくなります。余裕を持って申請書類の作成ができるように、提出スケジュールを確認しておきましょう。
助成金の申請は複雑な手続きが必要となりますので、社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。プロは助成金の申請に精通しており、適切なアドバイスを提供してくれます。雇用関係助成金は企業にとって重要な支援制度です。申請時には細心の注意を払い、助成金のメリットを最大限に活用しましょう。
08 まとめ
この記事では、正社員雇用を支援する助成金の種類とその活用方法について詳しく解説しました。国からの助成金を活用することで、人件費の負担を大幅に軽減し、事業の発展に寄与することが可能となります。以下に、本記事で解説した主要なポイントをまとめます。
1. 雇用関係助成金の基本的な理解:返済不要の助成金の特性とメリットについて説明しました。
2. 雇用助成金の受給条件:雇用保険適用事業所の事業主であること、労働基準法などの法令遵守が必須であることを明確にしました。
3. 9つの主要な助成金:ハローワーク経由の雇用で受給できるものから、それ以外でも受給可能なもの、さらに障害者雇用に関連するものまで、幅広く紹介しました。
これらの知識を活用し、国から貰える返済不要の支援金を積極的に受給しましょう。こうした助成金の活用は、企業の経済的な安定に貢献し、社員一人ひとりのキャリアアップを支えます。
しかしながら、キャリアアップ助成金の申請は、年々難易度が高まっており、専門家のサポートが不可欠な取り組みとなってきています。グロウライフ社会保険労務士法人では、助成金の無料相談を随時、受け付けておりますので、ぜひ、お困りの方は無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けてみてください。
こちらの記事も参考にしてください。
受付中の助成金の支給要件・受給額などの詳細は、こちらからご確認ください。