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助成金コラム

助成金のノウハウ

2023.11.13

業務改善助成金の活用事例と注意点を助成金専門の社労士が解説

こんにちは。

グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
本記事では、「業務改善助成金」の活用事例と注意点について詳しく解説します。業務改善助成金を活用した設備投資を検討しておられるのであれば、この記事の内容は非常に有益な情報になると思いますので、是非、最後までお読みください。

特に、以下のような課題に直面している方におススメです。
1. どのような設備投資が助成対象なのか知りたい。
2. 申請の流れや注意点について詳しく知りたい。
3. 業種別の活用事例を参考に、自社の計画を進めたい。

具体的な事例を多数取り上げておりますので、活用するイメージが湧きやすい内容となっています。助成金専門の社労士事務所であるグロウライフが、日々、助成金申請を代行している知見をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。助成金を活用して、人件費の負担軽減を実現しましょう。

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01 業務改善助成金の概要

賃上げと設備投資などの計画を立案・申請し、計画通りに実施した事業の結果を報告することで、最大600万円の助成金が支給されます。また、事業場内の最低賃金とは、最低賃金法に基づき、厚生労働省が地域ごとに定める最低賃金以上で、且つ各事業所で任意に定められる最も低い時間給の額を指します。

1.1 業務改善助成金の目的

賃上げを実施することで、従業員の生活水準が向上し、モチベーションの向上や離職率の低下など、労働環境の改善を期待することができます。ですが、その賃上げを実現するには収益力を強化し、その原資を確保する必要があります。業務改善助成金は、この収益力の強化を目的とした教育訓練や設備投資の取り組みを支援することを目的としています。

例えば、従業員が手作業で行っていた業務を自動化する機械やシステムを導入することで、業務効率が向上し労働時間の短縮や品質の向上が可能となります。事業所内の労働環境の改善と、企業の競争力の強化を同時に行えますので、本助成金を活用するメリットは極めて大きいと言えます。

1.2 支給要件と対象となる設備等

1)対象となる事業主
業務改善助成金は、次の要件に該当する「中小企業・小規模事業者」が対象となります。

・労災保険の適用事業所であること
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内である
 ※令和5年8月31日より、差額は30円以内から50円以内に拡充されています。
・解雇や労働関連法違反などの不交付事由がない

2)支給要件

・賃金引上げ計画の策定と実行
・生産性向上に役立つ業務改善の取り組み
・不交付事由がないこと
※賃金の引き上げや業務改善の取り組みには、細かなルールが設定されていますので、申請マニュアルを事前に確認し、制度の内容をしっかりと把握した上で進めてください。

3)対象となる設備等
助成対象事業場における、生産性向上に資する設備投資等が助成の対象となります。

対象経費例
機器・設備の導入 •料金精算用POSレジシステムの導入による精算業務のミスの削減と業務効率化
•顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
経営コンサルティング 飲食店のデリバリー拡充のためのコンサルティング
その他 飲食店で店舗改装による配膳時間の短縮

■助成対象経費の拡充

特例事業者のうち、「生産量または物価高騰等」の要件に該当する場合、基本的には助成対象とされていないパソコン等や一部の自動車も助成の対象となります。特例事業者に該当する場合でも、「生産性向上に資する設備投資」であるかの要件を満たさない限り、パソコンや自動車は対象になりませんので、ご注意ください。

参考:厚生労働省「業務改善助成金」

02 【業種別】業務改善助成金の活用事例

助成金を活用し、業務の効率化や働き方の見直しなどを実施して生産性向上を実現し、賃金の引上げを行った事例を業種ごとに紹介いたします。

2.1 製造業編

1)調理器具類

導入前 食品の加工・計量・調理などの作業を全て手作業で実施していたため作業効率が悪く、従業員の技術に応じて製品の品質にもばらつきが生じていました。
導入後 作業効率と品質のばらつきが大幅に改善しました。人員を販売部門に回すことが可能となり、生産性が向上しました。

導入事例 ・原料充填機(ケーキ生地、ジャムなど)
・食材カッター
・食材皮剥き機
・パン発酵機など

2)包装機

導入前 パッケージングはこれまで手作業で実施していたため、製品の品質にばらつきがあり、作業時間も長くなっていた。生産量も制限する必要があり、生産性を向上させることが難しかった。
導入後 均一かつ大量にパッケージングできるようになったことで、生産量を増加させることが可能となり、収益力が向上しました。

導入事例 ・シュリンク包装機
・菓子個包装機械

3)冷凍・冷蔵庫類

導入前 過去の設備ではストックスペースが不足しており、ストックできる範囲で仕込みを実施していた、作業効率が悪く、販売量も頭打ちになってしまっていた。
導入後 ストックスペースが確保できたことで、大量仕込み~大量販売を行いことが可能となり、大幅に生産性が向上しました。
導入事例 ・冷凍庫
・冷凍冷蔵庫

4)その他

導入事例 ・経理システム、工程管理システム、生産管理システム等
・フォークリフト
・特種用途自動車類(それに準ずるもの含む)
・改修等によるレイアウト変更
・ベルトコンベア
・ミシン

参考:厚生労働省「業務改善助成金業種別事例集(製造業編)」

2.2 宿泊業・飲食サービス業編

1)調理器具類

導入前 食材の下処理や大量調理に対応した設備がなかったため、少量ずつ仕込みを行う必要があり、売り上げが伸び悩んでいた。
導入後 仕込み時間と調理時間が大幅に短縮されたことで、人員をサービスに回すことが可能となり、店内の回転率向上と売上アップを実現しました。

導入事例 ・スチームコンベクションオーブン
・食材スライサー
・業務用製氷機

2)POSレジシステム、自動釣銭機等

導入前 会計時の金銭の授受、領収書の発行、売り上げの集計など、従業員の会計業務・レジ締め業務などの負担が大きくなっていました。
導入後 会計業務を自動化したことでサービススタッフの負担が大幅に改善しました。この改善により、店内の回転率も向上し、収益力が向上しています。

導入事例 ・POSレジシステム
・自動釣銭機
・券売機

3)洗浄機(食器洗浄機)

導入前 手作業による食器の洗浄では、作業効率が低下し、時間がかかっていました。
導入後 食器の洗浄時間が劇的に短縮され、作業効率が向上しました。

導入事例 ・食器洗浄機
・全自動鉄板洗い機

4)その他

導入事例 ・管理システム、オーダーシステム、給与システム等
・業務用冷凍庫、業務用冷蔵庫、温蔵庫等
・改修等によるレイアウト変更
・人材育成
・ベルトコンベア

参考:厚生労働省「業務改善助成金業種別事例集(宿泊業・飲食サービス業編)」

2.3 生活関連サービス業・娯楽業編

1)美容器具・施術器具類

導入前 既存の機械では仕上がりにムラが生じ、施術時間が延びるという問題がありました。
導入後 施術時間を短縮し、高品質なサービスを提供でき、顧客の回転率も向上できました。

導入事例 ・脱毛器
・デジタルパーマ、スチーマー類
・育毛器

2)シャンプーユニット

導入前 利用者の体勢の調節作業が非効率であるだけでなく、ユニットの台数が少なくて待ち時間も発生し、施術時間が長くなっていました。
導入後 状況に応じて、高さの調節や角度の調整が可能となり、ユニットの数も増加し、施術時間が短縮されました。

導入事例 ・シャンプーユニット(調節機能付)

3)洗濯機・乾燥機

導入前 洗濯物の種類によって乾燥にかかる時間が異なるため、処理時間が長くなっていました。
導入後 乾燥後の品質向上と作業時間の短縮により、全体の作業効率が向上しました。
導入事例 ・業務用乾燥機
・業務用洗濯乾燥機

4)その他

導入事例 ・経営ソフト、顧客管理システム、オーダーシステム等
・POSレジシステム
・教育研修費用
・集球設備(ゴルフ練習場)
・平型包装機(クリーニング業)

参考:厚生労働省「業務改善助成金業種別事例集(生活関連サービス業・娯楽業編)」

2.4 医療・福祉編

1)福祉車両

導入前 利用者の送迎にかかる時間が多く、複数の従業員が対応する必要がありました。
導入後 利用者は車いすに乗ったまま乗降することができ、それによって送迎に必要な人員を減らすことや、全体の送迎時間を短縮することが可能となりました。

導入事例 ・引き上げリフト付き福祉車両
・スロープ付き福祉車両
・大人数送迎可能福祉車両

2)歯科用チェアユニット

導入前 給水管などの清掃には時間が必要であり、場合によっては設備の分解や診察ごとに清掃を行うことがありましたので、作業効率が低下していました。
導入後 自動清掃機能などにより、給水管などの清掃時間は短縮され、作業効率が向上しました。

導入事例 ・チェアユニット(清掃機能付など)

3)施術ベッド・医療ベッド類

導入前 利用者の移乗や起き上がり補助を複数人で行うことはよくあり、作業を効率的に進めることが難しいという問題がありました。
導入後 ベッドの高さ調節機能の導入により、1人で効率的に作業を行うことができ、作業効率が向上しました。
導入事例 ・電動式ベッド(調節機能付)
・ウォーターベッド型マッサージ器

4)その他

導入事例 ・受発注機能付きシステム、診療予約管理システム等
・食器洗浄機、治療器具洗浄機
・POSレジシステム、自動釣銭機
・レントゲン装置、CT設備
・改修等におけるレイアウト変更

参考:厚生労働省「業務改善助成金業種別事例集(医療・福祉編)」

2.5 卸売業・小売業

1)POSレジシステム、自動釣銭機等

導入前 入金や売上の集計、領収書の発行、釣銭の支払いなど、作業時間が長くなっていました。
導入後 清算業務の自動化と時間短縮により、顧客の回転率も改善されました。

導入事例 ・POSレジシステム
・自動釣銭機

2)フォークリフト・特種用途自動車類(それに準ずるもの含む)

導入前 荷物の運搬や積み下ろし作業に、時間が非効率的に費やされていました。
導入後 一度に大量の重い物を持ち運ぶことができるため、作業効率が向上しました。

導入事例 ・フォークリフト
・運搬用冷凍車

3)その他

導入事例 ・食品卸売システム、会計・仕入・販売システム、顧客管理システム等
・受発注機能付きホームページ
・経営コンサルタント・
・人材育成・教育訓練
・真空包装機

参考:厚生労働省「業務改善助成金業種別事例集(卸売業・小売業編)」

03 業務改善助成金の注意点

業務改善助成金は、「設備投資」や「賃金引上げ」のタイミングが厳密に定められています。要件が見直されることが多く、去年は対象だったが今年は対象にならない…みたいなこともありますので、段取りには、くれぐれもご注意ください。

3.1 申請前の設備投資について

交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は、助成の対象となりません。予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります。必ず最新の交付要綱・要領で助成要件をご確認ください。

3.2 最低賃金の引上げについて

2023年10月から順次発効される地域別最低賃金の改定額に応じて、事業場内の最低賃金を引き上げる場合は、発効日の前日までに引き上げる必要がございます。

※令和5年8月31日より、事業場規模50人未満の場合に限り、以下の要件を満たしていれば、事業場内最低賃金引き上げ後であっても、生産性向上に資する設備投資等の計画のみを立てて申請いただくことができます。

・業務改善助成金の対象事業者であること
・令和5年4月1日から12月31日までに事業場内最低賃金を引き上げていること
※「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること」の要件は、事業場内最低賃金の引き上げ前の金額と比較します。

参考:厚生労働省「業務改善助成金」

04 業務改善助成金のよくあるQ&A

問1)賃金引上げの予定があれば、現在は地域別最賃を下回っていても助成対象となりますか。
回答)
賃金引上げの計画を立てて申請する場合は、申請時に地域別最賃を下回っている事業場は、助成対象とはなりません。また、賃金を引き上げてから申請する場合は、賃金引上げの過程において地域別最賃を下回っていた日があれば、助成対象とはなりません。
問2)交付申請後、計画に基づく賃金の引上げはいつまでに行えばよいですか。
回答)
賃金の引上げは、交付申請後以降から事業完了期日までの間であれば、実施時期を問いません。また、実際の支払いは事業実績報告書の提出日までに行う必要があります。
※令和5年8月31日より、事業場規模50人未満の場合に限り、2023年4月1日から12月31日までに賃金引上げを実施していれば、賃金引上げ計画の事前提出は不要となっています。(賃金引上げ結果の届出は必要)
問3)雇入れ後3月未満の労働者は「引き上げる労働者数」に含まれますか。
回答)
要領では、「引き上げる労働者数」の雇用期間について定めていないことから、雇入れ後3月未満の労働者も「引上げ後の賃金額を下回る労働者」に該当します。一方で、事業場内最賃を決める際には、雇入れ後3月以上の労働者を基準にする必要がありますのでご留意ください。
問4)交付決定後、導入機器の内容・金額に変更があった場合は、助成対象になりますか。
回答)
変更の内容によっては助成対象となりません、その場合、再度交付申請していただく必要がありますのでご留意ください。また、機器の値引きなどにより、当初の予定額を下回った場合は、実際に支払った額に基づいて助成金は支給されます。

参考:厚生労働省「業務改善助成金Q&A」

05 まとめ

この記事では、業務改善助成金の活用事例や注意点などについて詳しく解説しました。生産性の向上と賃金の引き上げは、今、国が力を入れているテーマということもあり、非常に利用しやすい制度と言えます。

上手に国の制度を利用して、リーズナブルに設備投資を行い、生産性の向上に成功している事例を知っていただくことで、皆様の取り組みがより具体的になることを願っています。以下に業務改善助成金の対象となる設備投資などのポイントをまとめておきます。

– 業務の負担軽減(時短・自動化)につながるものであること
– 業者への支払いは、必ず交付決定日以降に実施すること
– 計画時に届出している見積書の通り設備投資を実施すること

国からの返済不要の支援金は、ビジネスの発展の大きな後押しとなります。この絶好の機会を活用して、企業の業務効率化や質の向上を図りましょう。しかし、助成金の申請は、年々難易度が高まっており、専門家のサポートが不可欠な取り組みとなってきています。

グロウライフ社会保険労務士法人では、助成金の無料相談を随時、受け付けておりますので、ぜひ、お困りの方は無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けてみてください。

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