助成金のノウハウ
2024.04.02
人材開発支援助成金 人への投資促進コース:助成金申請のプロが解説
こんにちは。
グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
本記事では、「人材開発支援助成金 人への投資促進コース」について、その概要と具体的な活用法について詳しく解説していきます。
企業の人材育成を支援する雇用助成金といえば、人材開発支援助成金の一択になります。この助成金は、企業が人材育成に取り組む際の負担を軽減するための国の支援策です。しかし、その申請手続きは複雑で、どのように申請すればよいか迷っている方も多いのではないでしょうか?
そこで、本記事では以下の内容をわかりやすく解説します:
① 人への投資促進コースの概要とその設立の背景
② このコースが提供する5つの訓練の種類と特徴
③ 申請対象となる事業主・労働者の条件
④ 助成金の申請手続きと必要な書類
これらの知識を身につけることで、人材開発支援助成金を活用するための具体的な手順や注意点を理解し、自社の人材開発計画を具体化する一助となる筈です。
助成金専門の社労士事務所であるグロウライフが、日々、助成金申請を代行している知見をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。助成金を活用して、人件費の負担軽減を実現しましょう。
01 人材開発支援助成金「人への投資促進コース」について
「人への投資促進コース」は、国民の声から誕生した制度です。この制度が何を目的としているか、概要や設立の背景について説明してまいります。
1.1 人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の概要
「人への投資促進コース」には、IT・デジタル分野における人材育成や、従業員の能力向上への支援、長期休暇制度を活用した能力開発など、さまざまなメニューがあります。また、サブスクリプション訓練を実施する事業主に対しても助成金が提供されます。
以下の5種類の訓練が、「人への投資促進コース」の対象となります。
●高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
●情報技術分野認定実習併用職業訓練
●定額制訓練(サブスクリプション型の訓練)
●自発的職業能力開発訓練
●長期教育訓練休暇等制度
1.2 「人への投資促進コース」設立の背景
政府は「人への投資」という経済政策を強化するために、人への投資促進コースを設けました。
厚生労働省が公式サイトで国民からのアイデアを募集したところ、企業による従業員教育や学び直し、転職などを支援するためにデジタル分野での支援が必要であるという意見が多く寄せられました。その結果を踏まえて、国は2022年から2024年までの期間、人への投資促進コースを設けて、特定の訓練を実施する事業主に対して経費や賃金などを助成することを決定しました。
1.3 人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の活用のメリット
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の活用は、従業員の能力向上や新たなビジネス展開の支援など、企業の成長に大きく寄与するメリットがあります。助成金を利用して、労働者の専門的な知識と技能の向上を図り、競争力の強化を目指しましょう。
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の活用のメリットは、以下のようになります。
1)労働者の専門的な知識と技能の向上
助成金を利用することで、従業員の職務に関連した専門的な知識と技能を習得させることができます。これにより、従業員の能力向上や業務の効率化が図れます。
2)訓練経費の助成
助成金を受けることで、訓練経費の一部を助成してもらえます。これにより、訓練にかかる費用を軽減できます。
3)訓練期間中の賃金の助成
訓練期間中も、労働者の賃金の一部が助成されます。つまり、従業員は訓練を受けながらも、一定の給与を受け取ることができます。
4)新たなビジネス展開の支援
助成金を利用することで、新たなビジネス展開のために必要な、デジタル化などの人材育成を支援してもらえます。これにより、企業の成長や競争力の向上につながります。
5)訓練方法の柔軟性
従来は対面での訓練が主でしたが、「人への投資促進コース」では、eラーニングや通信制などの訓練も対象となっています。これにより、時間や移動などの制約を受けずに訓練を受けることができます。
02 人への投資促進コースの5つの訓練の概要
人への投資促進コースの、5つの訓練の概要について解説します。
各訓練メニューの助成率・助成金額の一覧は、以下のようになります。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)」
2.1 デジタル/成長分野
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
■DX推進や成長分野などでのイノベーションを促進するための、専門的な人材育成に対する助成金
2.2 IT分野未経験
情報技術分野認定実習併用職業訓練
■IT分野未経験者の即戦力化のための訓練に関して、OFF-JTとOJTを組み合わせた形式での助成金
2.3 柔軟な訓練形態の助成対象化(サブスクリプション)
定額制訓練
■労働者の多様な訓練の選択・実施を可能にする定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)への助成金
2.4 労働者の自発的な能力開発の促進(自発的能力開発)
自発的職業能力開発訓練
■労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する事業主への助成金
2.5 教育訓練休暇
長期教育訓練休暇等制度
■教育訓練休暇制度や教育訓練短時間勤務等制度を導入し、労働者の自発的な職業能力開発を促進する助成金
03 対象となる事業主・労働者の条件
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の、対象となる事業主や労働者の条件について説明します。
3.1 対象事業者の条件
次に挙げる要件をすべて満たすことが必要です。さらに、個々の訓練内容ごとにも要件が存在します。
1 | 雇用保険適用事業所の事業主である |
---|---|
2 | 労働組合等の意見を参考に、事業内職業能力開発計画およびそれに基づく職業訓練実施計画届を作成し、その計画の内容を従業員に周知している |
3 | 職業能力開発推進者を選任している |
4 | 規定の期間(6ヵ月程度)、事業主都合の解雇等をしていない |
5 | 規定の期間(6ヵ月程度)、「事業所の廃止、人員整理による解雇等」と「事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職」の割合が全体の6%以下である |
6 | 従業員に職業訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っている |
7 | 助成金の関係書類などを整備し5年間保存する |
8 | 助成金に関係する書類の提出や調査などに協力する |
3.2 対象労働者の条件
以下の要件をすべて満たすことが必要です。さらに、訓練メニューごとにも要件がございます。
1 | 該当事業所の雇用保険被保険者である(訓練実施期間中も含む) |
---|---|
2 | 職業訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」などに記載されている |
3 | 訓練受講時間が、実訓練時間数の80%以上である |
04 人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の申請について
人材開発支援助成金「人への投資促進コース」の申請について
4.1 訓練計画の届出~支給申請の流れ
訓練計画の届出から、支給申請までの流れは、以下のようになります。訓練の内容によって、少しだけ異なりますのでご注意ください。
参考:厚生労働省「人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内(詳細版)」
ステップ1)事業内計画の作成等
「人への投資促進コース」を利用する際には、まず「事業内職業能力開発計画」を作成し、労働者に段階的で体系的な訓練を実施する必要があります。また、社内で職業能力開発の取り組みを推進する役割を担う「職業能力開発推進者」を選定する必要があります。
ステップ2)計画届の申請
「職業訓練実施計画届」を作成し、訓練開始日の1ヵ月前までに必要書類を都道府県労働局に提出します。
ステップ3)制度導入
「自発的職業能力開発訓練」と「長期教育訓練休暇等制度」の場合は、就業規則等で制度を導入する必要があります。
ステップ4)訓練実施(制度の適用)
「職業訓練実施計画届」に記載した訓練をおこないます。なお、計画を変更する場合は、事前に「職業訓練実施計画変更届」の提出が必要です。
スレップ5)支給申請
訓練終了日の翌日から2ヵ月以内に支給申請します。1日でも期限を過ぎると助成金が支給されませんので、十分にご注意ください。
4.2 申請時に必要な書類
1)訓練計画の届出時に必要な提出書類
■職業訓練実施計画届(様式第1-1号)
■訓練別の対象者一覧(様式第4-1号)※定額制訓練は不要
■事前確認書(様式第11号)
上記の書類に添付書類を付けて提出します。訓練の内容によって、必要な添付書類は異なりますので、事前に確認しておきましょう。これらの書類のほかにも、別途書類が必要になることがありますので、ご留意ください。
2)支給申請時に必要な申請書類
デ | 成 | 情 | 定 | 自 | |
■支給要件確認申立書(共通要領様式第1号) | ● | ● | ● | ● | ● |
■支払方法・受取人住所届(未提出の場合のみ) | ● | ● | ● | ● | ● |
■支給申請書(様式第5号) | ● | ● | ● | ● | ● |
■賃金助成・OJT実施助成の内訳(様式第6号) | ● | ● | ● | ● | ● |
■経費助成の内訳(様式第7-1号) | ● | ● | ● | ● | ● |
■OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号) | ● | ● | ● | ● | ● |
支給申請時には、上記に加えて多くの添付書類が必要です。書類がそろっていることは当然ですが、書類自体が労働法などに適合したものであることも必要です。訓練内容によっても書類が異なります。助成金の申請を計画した時点で、必要書類を把握して、しっかりと整備しておかないと支給申請は難しくなります。
自社だけで適法な書類を整備するのが困難な場合は、早めに社会保険労務士に相談して、計画的に助成金の申請をするようにしましょう。
05 まとめ|人材開発支援助成金「人への投資促進コース」
この記事では、企業の成長と競争力強化を目指す「人材開発支援助成金 人への投資促進コース」について詳しく解説しました。ここで、本記事の内容を簡潔にまとめておきましょう。
1. 人への投資促進コースは、労働者のスキルアップを支援し、企業の競争力向上を目指す制度。
2. 助成対象となる訓練プログラムは幅広く、企業が自社の人材開発計画に合わせて選択可能。
3. 対象となる事業主と労働者には特定の条件があり、自社が適用可能かどうかを判断することが重要。
4. 申請手順や必要な書類は複雑だが、適切な準備をすることでスムーズに申請することが可能。
このように、国からの返済不要の支援金を積極的に受給することで、人材育成の効果を最大化し、経営効率を向上させることが可能です。しかし、人材開発支援助成金の申請は、年々難易度が高まっており、専門家のサポートが不可欠な取り組みとなってきています。
グロウライフ社会保険労務士法人では、助成金の無料相談を随時、受け付けております。自社の人材開発計画を具体化し、そのための財源を確保したい方、または申請に迷っている方は、ぜひ、無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けてみてください。