助成金のノウハウ
2023.11.10
設備投資の負担を業務改善助成金で軽減!活用法を助成金のプロが解説
こんにちは。
グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
本記事では、業務改善助成金をわかりやすく解説し、設備投資におけるその活用方法を詳しく紹介します。業務改善助成金は、多くの事業主にとって大きなサポートとなる制度ですが、適切に活用するための方法や要件を知らないと、効果的に受給することが難しい場合があります。
この記事を通じて、以下のような課題を持つ読者の皆様の疑問を解消することを目指します。
・業務改善助成金の目的と活用するメリット
・対象となる事業主、対象となる業務改善の条件
・申請から受給までの流れと注意点
業務改善助成金を適切に活用することで、設備投資の負担を大きく軽減することができますので、資金計画や投資戦略の見直しを行う上で、大変有効な手段となります。
助成金専門の社労士事務所であるグロウライフが、日々、助成金申請を代行している知見をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。助成金を活用して、設備投資の負担軽減を実現しましょう。
01 業務改善助成金とは?
業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を引き上げ、生産性向上のための設備投資などを行った場合に、その費用の一部を国が助成する仕組みです。賃金を引き上げるには、その原資を生み出していく必要がありますので、設備投資などによる生産性向上の取り組みを支援するために創設された制度になります。
1.1 生産性アップと最低賃金引き上げを支援
賃上げと設備投資などの計画を立案・申請し、計画通りに実施した事業の結果を報告することで、最大600万円の助成金が支給されます。また、事業場内の最低賃金とは、最低賃金法に基づき、厚生労働省が地域ごとに定める最低賃金以上で、且つ各事業所で任意に定められる最も低い時間給の額を指します。
1.2 業務改善助成金を活用するメリット
業務改善助成金を活用すれば、生産性向上のための設備投資に取り組みつつ、事業場内の最低賃金の引き上げに前向きに取り組むことが可能になります。
賃上げを実施することで、従業員の生活水準が向上し、モチベーションの向上や離職率の低下など、労働環境の改善を期待することができます。ですが、その賃上げを実現するには収益力を強化する必要があり、生産性向上につながる教育訓練や設備投資の場面で申請することができる本助成金を活用するメリットは極めて大きいと言えます。
例えば、従業員が手作業で行っていた業務を自動化する機械やシステムを導入することで、業務効率が向上し労働時間の短縮や品質の向上が可能となります。事業所内の労働環境の改善と、企業の競争力の強化を同時に行える非常に理にかなった制度と言えます。
02 業務改善助成金の対象となる事業主
業務改善助成金は、次の要件に該当する「中小企業・小規模事業者」が対象となります。
・労災保険の適用事業所であること ・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内である ※令和5年8月31日より、差額は30円以内から50円以内に拡充されています。 ・解雇や労働関連法違反などの不交付事由がない |
2.1 対象となる事業場の基本要件
上記の要件を満たした事業者は、「事業実施計画書」を作成し、事業場ごとに交付申請を行います。また、対象事業主の要件である、中小企業・小規模事業者とは、以下の「A資本金等またはB常時雇用労働者」のいずれかの要件をクリアする事業者になります。
2.2 個人事業主は対象となるか?
要件をクリアしていれば個人事業主(労災保険の適用は必要)も対象となります。要件をクリアしているかどうか疑問がある場合には、お近くの労働局などにお問い合わせください。
2.3 特例事業者とは?
業務改善助成金では、つぎのいずれかに該当する事業者を「特例事業者」としています。「生産量要件」か「物価高騰等要件」に該当する場合には、助成上限額と助成対象経費の拡大が受けられます。
賃金要件 | 事業場内最低賃金が950円未満 |
---|---|
生産量要件 | 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上高や生産量等の、事業活動を示す指標の直近3ヵ月間の月平均値が、1~3年前同期に比べて15%以上減少している |
物価高騰等要件 | 原材料費の高騰など社会的・経済的の変化等により、申請前3ヵ月間のうち、任意の1ヵ月の利益率等が、前年同期に比べ3%ポイント以上低下している |
03 業務改善助成金の具体的な支給要件
具体的な支給要件について解説します。「賃金引上げ計画の策定と実行」や「生産性向上に役立つ業務改善の取り組み」、「不交付事由がないこと」など細かなルールが設定されていますので、申請マニュアルを事前に確認し、制度の内容をしっかりと把握した上で進めてください。
3.1 賃金引上げ計画の策定と実行
雇用契約から3ヵ月以上経過した労働者の、事業場内最低賃金を30円以上引き上げる計画を策定・実行します。また、就業規則等でその引上げ後の賃金額を事業場で使用する労働者の最低賃金と定めることも必要です。計画の届出時点で労働者全員の直近3か月分の賃金台帳の提出が求められます。
3.2 生産性向上に役立つ業務改善の取り組み
同時に、生産性向上に役立つ業務改善の取り組みを行う必要があります。取り組み内容としては、「機械設備導入、コンサルティング、人材育成・教育訓練など」となります。計画の届出時点で取り組みに関する見積書や相見積書、機器やサービスの仕様の解る資料の提出が求められます。
3.3 不交付事由がないこと
不交付事由は、以下のようになります。かなり細かいルールがありますので、申請マニュアルなどでしっかりと確認しておきましょう。
1 | 一定の期間内に、「解雇や時間当たり賃金の引き下げ、労働時間短縮に伴う賃金額の減少、類似助成金の2重受給」などを行った |
---|---|
2 | 過去に業務改善助成金を受け、その後の賃金額が「事業場内最低賃金」を下回っている |
3 | 一定の期間内に労働関係法令に違反していることが明らかになった |
4 | 一定の期間内に補助金等の取消処分を受けている |
5 | 代表者や役員等に暴力団員等の関係者がいる |
6 | 代表者や役員等が暴力主義的破壊活動等に関係している |
7 | 労働保険料などの滞納がある |
8 | 交付申請時などに倒産等をしている |
9 | 助成金不正受給時の公表について同意していない |
04 対象となる経費や賃上げ時の注意点
助成対象となる具体的な設備投資やサービスの範囲、最低賃金の引き上げする際の注意点などについて解説します。
4.1 助成対象となる具体的な経費
助成対象事業場における、生産性向上に資する設備投資等が助成の対象となります。拠点ごとに労災保険を適用されていれば、各拠点でそれぞれ申請することが可能です。拠点ごとに申請する場合は、対象の拠点に在籍している労働者の賃上げを実施する必要がありますので、ご注意ください。
対象経費例 | |
機器・設備の導入 | •料金精算用POSレジシステムの導入による精算業務のミスの削減と業務効率化 •顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化 |
経営コンサルティング | 飲食店のデリバリー拡充のためのコンサルティング |
その他 | 飲食店で店舗改装による配膳時間の短縮 |
■助成対象経費の拡充
特例事業者のうち、「生産量または物価高騰等」の要件に該当する場合、基本的には助成対象とされていないパソコン等や一部の自動車も助成の対象となります。特例事業者に該当する場合でも、「生産性向上に資する設備投資」であるかの要件を満たさない限り、パソコンや自動車は対象になりませんので、ご注意ください。
4.2 最低賃金の引き上げに関する注意点
原則、事前に「賃金引き上げ計画」「事業実施計画(設備投資などの計画)」を労働局へ届出する必要があります。
※令和5年8月31日より、事業場規模50人未満の場合に限り、2023年4月1日から12月31日までに賃金引上げを実施していれば、賃金引上げ計画の事前提出は不要となっています。(賃金引上げ結果の届出は必要)
また、2023年10月から順次発効される地域別最低賃金の改定額に応じて、事業場内の最低賃金を引き上げる場合は、発効日の前日までに引き上げる必要があります。
05 業務改善助成金の申請から受給までの流れ
業務改善助成金の申請から受給までの流れについて解説します。
5.1 交付申請書の提出方法
業務改善計画(設備投資などの実施計画)と、事業場内最低賃金の引上計画を記載した交付申請書(様式第1号)を作成し、必要な添付資料とともに都道府県労働局に提出してください。提出に当たっては、マニュアルについている交付申請チェックリストを活用すると便利です。
5.2 業務改善や賃金引上げの実施の流れ
原則、労働局からの交付決定通知後、業務改善計画に基づき、設備投資等を行ってください。なお、交付決定通知書の助成金額や業務改善計画の内容など、申請の内容が変更となる場合は、あらかじめ計画変更申請書(様式第3号)を所轄労働局長に提出し、承認を受ける必要があります。変更したまま放置していると、助成金が不支給となるケースもありますので、必ず変更の手続きをしておきましょう。
5.3 事業実績報告書と支給申請書の提出のポイント
業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書(様式第9号)および助成金支払いのための支給申請書(様式第10号)を作成し、都道府県労働局に提出してください。添付書類として、設備投資等に関する請求書や支払い状況を証明する明細、納品書などの提出を求められますが、計画時に提出している見積書との齟齬があると不支給になる可能性があります。提出に当たっては、マニュアルについているチェックリストを活用して、ミスのないようにしましょう。
5.4 助成金受け取りまでの期間と注意点
都道府県労働局が助成金額の確定および支給決定通知を行い、後日、助成金が支払われます。
以下に注意して申請を行いましょう。
• 過去に業務改善助成金を活用した事業者も助成の対象となります。 • 予算の範囲内で交付するため、申請期間内に募集を終了する場合があります。 • 交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は助成の対象となりません。 • 支給決定から6か月後、取り組みに関する状況報告を実施する義務がありますので、ご注意ください。 • 必ず最新の交付要綱・要領で助成要件をご確認ください。 |
06 まとめ
この記事では、業務改善助成金をわかりやすく解説し、設備投資の負担軽減のための活用方法について詳しく解説しました。以下の点で、その要点を簡潔におさらいしましょう。
業務改善助成金:生産性向上のための設備投資や賃上げの支援を目的とした制度。
対象となる事業主:労災の適用事業所であれば個人事業主も対象となる。
対象となる経費:従業員の作業効率を向上させるための設備投資や訓練が対象。
対象となる賃上げ:令和5年8月31日の要件緩和で、申請しやすくなっている。
国から貰える返済不要の支援金は、事業の発展や安定に大きく寄与します。積極的な受給を通じて、事業運営の一助としてください。しかし、助成金の申請は年々難易度が高まっており、専門家のサポートが不可欠な取り組みとなってきています。グロウライフ社会保険労務士法人では、助成金の無料相談を随時受け付けておりますので、ぜひ、お困りの方は無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けてみてください。