助成金のノウハウ
2026.03.14
【2025最新】介護離職防止支援コースとは?助成額・要件・法改正を社労士が完全解説
こんにちは。グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
「長年現場を支えてくれた部長が、親の介護で退職を申し出てきた」――2026年現在、多くの中小企業経営者様から、こうした深刻なご相談が寄せられています。実際、毎年約10万人が家族の介護を理由に離職しており、その中心は企業にとって代えの利かない40代後半から50代のベテラン層です。彼らを失うことは、採用・育成コストとして数百万円単位の損失を意味します。
しかし、2025年4月の改正育児・介護休業法の施行を機に、「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」を正しく活用すれば、最大で約140万円の助成金を受給できる可能性があります。これは単なるコスト補填ではなく、社員を守り、事業資金を確保するためのチャンスです。
この記事でわかること
- 2025年法改正への完全対応と助成金申請への直結方法
- 最大140万円受給のための「3つの柱」と組み合わせパターン
- 「業務代替支援」を活用した現場の不満解消の仕組み
- 一発不支給となる実務上の地雷ポイント
1. なぜ2026年の今、介護離職防止が経営最優先課題なのか

【この章のポイント】
年間10万人が介護を理由に離職し、その中心は40〜50代のベテラン層。採用・育成・機会損失で数百万円の経営ダメージが発生する。2025年4月の法改正により「個別周知・意向確認」が義務化され、対応しなければ助成金申請もできない。
2026年現在、中小企業が直面している最大の人材リスクが「介護離職」です。厚生労働省の統計によれば、毎年約10万人が介護・看護を理由に仕事を辞めており、過去5年間では50万人以上が職場を去っています。離職者の中心は、親が高齢化する40代後半から50代のベテラン社員です。
| 損失の種類 | 具体的な経営ダメージ |
|---|---|
| 採用・教育コスト | 同レベルの人材確保に紹介手数料や広告費が発生。育成には数年と数百万円が必要 |
| 生産性低下 | ノウハウ継承が途絶え、残された社員への負荷が急増。連鎖離職のリスクも |
| 機会損失 | プロジェクト遅延や品質低下により、顧客信用を失う |
もはや介護離職対策は「福利厚生」ではなく、事業資金とキャッシュフローを守る経営戦略です。
2025年4月施行!改正育児・介護休業法の義務
この危機感を受け、国は2025年4月より改正育児・介護休業法を施行し、全企業に以下を義務付けました。
| 改正ポイント | 企業に求められるアクション |
|---|---|
| 個別周知・意向確認 | 従業員から「介護が必要」と申し出があった際、制度を個別に説明し、取得意向を確認 |
| 早期の情報提供 | 40歳などの節目で、介護両立支援制度の情報を事前提供 |
| 雇用環境の整備 | 研修実施や相談窓口の設置など、職場環境を整備 |
この法対応を怠ると、労働局からの是正勧告だけでなく、本記事で解説する助成金の申請要件を満たせず不支給となります。「法律を守る」ことが「助成金をもらう」第一歩です。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
参考:厚生労働省「経済産業省における介護分野の取組について」
2. 介護離職防止支援コースの全体像と受給資格
【この章のポイント】
中小企業限定の助成金。資本金または従業員数のいずれかが基準を満たせば対象。「3つの柱(区分1〜3)」と「環境整備加算」の組み合わせで、1人あたり最大140万円、各区分5人まで申請可能。
「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」は、仕事と介護の両立を支援する中小企業を国がバックアップする制度です。大企業は対象外のため、以下の基準を必ず確認してください。
対象となる中小企業の定義
| 業種 | 資本金・出資額 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他(製造業・建設業等) | 3億円以下 | 300人以下 |
※「資本金」または「労働者数」のいずれか一方を満たせば中小企業として扱われます。
※対象従業員は「雇用保険被保険者」である必要があります。
3つの柱と環境整備加算の全体マップ
2025年度は「業務代替支援」が強化され、現場の負担軽減に予算を使えるようになった点が特徴です。
| 区分(柱) | 概要 | 最大支給額(1人あたり) | 申請可能人数 |
|---|---|---|---|
| 助成1:介護休業 | 連続5日以上の介護休業を取得させ、原職復帰させた場合 | 60万円(15日以上) | 5人まで |
| 助成2:両立支援制度 | 時差出勤や短時間勤務など、柔軟な働き方を導入・利用させた場合 | 40万円(2制度以上・60日以上) | 5人まで |
| 助成3:業務代替支援 | 代替要員の新規雇用または同僚への手当支給を行った場合 | 30万円(新規雇用・15日以上) | 5人まで |
| 環境整備加算 | 研修・相談窓口など4つの措置を全て実施した場合 | 10万円 | 1事業主1回限り |
複数の従業員が介護に直面しても、その都度申請を行い、継続的な支援を受けることが可能です。これは単なる個人救済ではなく、事業資金を確保し組織を強化するチャンスです。
参考:厚生労働省「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」
3. 【助成1】介護休業で最大60万円を受給する条件
【この章のポイント】
連続5日以上の介護休業で40万円、15日以上で60万円。受給には「プラン作成(休業開始前)」「原職復帰」「フォロー面談」が必須。原職復帰とは「休業前と同じ部署・職務」への復帰を指し、曖昧な配置転換は不支給リスクあり。
介護離職防止支援コースの中核となるのが、この「介護休業」区分です。2025年度は長期取得を優遇する形に最適化されました。
休業日数による支給額の違い
| 介護休業の取得日数 | 支給額(1人あたり) |
|---|---|
| 連続15日以上 | 60万円 |
| 連続5日以上 | 40万円 |
※1事業主あたり1年度に5人まで申請可能
※「連続」である必要があり、断続的な取得は対象外
絶対に外せない4つの支給要件
単に「休ませて、戻す」だけでは不十分です。以下のステップを計画的に実行する必要があります。
| 要件 | 具体的な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 1. 介護支援プランの作成 | 休業開始前までに面談を行い、業務引継ぎ方法を盛り込んだプランを作成・交付 | 休業終了後の作成は不可(一発不支給) |
| 2. 連続5日以上の取得 | 所定労働日において連続した期間休業させる | 土日祝を含めてカウント可能 |
| 3. 原職復帰と3か月継続雇用 | 休業前と同じ部署・職務に復帰させ、その後3か月以上雇用保険被保険者として継続雇用 | 配置転換は原則NG |
| 4. フォロー面談の実施 | 職場復帰後に両立状況を確認する面談を行い、記録を残す | 電話・メール可だが記録必須 |
「原職復帰」の厳格な定義
助成金審査で最もトラブルになるのが「原職復帰」の解釈です。厚生労働省の指針では、原職復帰とは以下を指します。
「休業前に勤務していた部署(組織の最小単位)であり、かつ同一の職務内容」
例えば、営業部の課長が休業した場合、復帰先は営業部の課長である必要があります。「総務部の課長」や「営業部の平社員」では原職復帰とは認められません。組織変更などでどうしても同じポストに戻せない場合は、地位や賃金が下がらない「原職相当職」として慎重な配慮が求められます。
参考:厚生労働省「介護支援プラン策定マニュアル」
参考:厚生労働省「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)Q&A」
4. 【助成2】両立支援制度で最大40万円を獲得する戦略
【この章のポイント】
時差出勤や在宅勤務など8つの制度から選択可能。2つ以上導入し60日以上利用させれば40万円。2025年法改正でテレワーク提示が努力義務化され、在宅勤務規定の整備が法対応と助成金受給を同時達成する鍵となる。
仕事を続けながら介護する従業員を支える柔軟な働き方を導入し、実際に利用させた場合に支給されるのがこの区分です。
対象となる8つの制度
以下のいずれかを就業規則に規定し、介護支援プランに基づいて利用させる必要があります。
| 制度名 | 内容 |
|---|---|
| 所定外労働の制限 | 残業をさせない |
| 時差出勤制度 | 始業・終業時刻をずらす |
| 深夜業の制限 | 22時〜5時の労働禁止 |
| 短時間勤務制度 | 所定労働時間の短縮 |
| 介護のための在宅勤務 | テレワーク |
| 法を上回る介護休暇 | 有給かつ時間単位取得など |
| フレックスタイム制度 | コアタイムなしも可 |
| 介護サービス費用補助 | 費用の全部または一部補助 |
支給額アップのロジック
支給額は「導入する制度の数」と「利用期間」によって変動します。
| 制度導入数 | 20日以上の利用 | 60日以上の利用 |
|---|---|---|
| 制度を1つ導入 | 20万円 | 30万円 |
| 制度を2つ以上導入 | 25万円 | 40万円 |
※1事業主あたり1年度に5人まで申請可能
※介護休暇制度は「6か月間で合計10時間以上」、費用補助制度は「6か月間で10万円以上または5割以上」の基準あり
2025年の鍵は「在宅勤務」の活用
2025年4月の改正育児・介護休業法により、企業は要介護家族がいる従業員に対し、テレワークという選択肢を提示するよう努める義務が課されました。つまり、「介護のための在宅勤務規定」を整備し実際に利用させることで、法対応と助成金受給(最大40万円)を同時達成できます。
ただし、テレワークで申請する場合、労働局は「本当に働いていたのか?」を厳しくチェックします。始業・終業の報告メールやシステムログなど、客観的な勤務実績の記録を必ず残すようにしてください。
参考:厚生労働省「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」
5. 【助成3】業務代替支援で現場の不満を30万円で解消
【この章のポイント】
休業者の穴埋めを行う代替要員の新規雇用で最大30万円、または同僚への手当支給で最大10万円。この助成金の真価は「残された社員」へのメリット。手当は1日500円または月1万円以上が基準。業務効率化の取り組みとセットで申請必須。
介護休業の取得において、経営者が最も頭を悩ませるのは「残された現場の負担」です。この課題を直接解決するのが「業務代替支援」です。2025年度は大幅に強化され、現場の不満を「お金」と「体制」でケアできるようになりました。
新規雇用 vs 手当支給の支給額比較
| 代替の方法 | 支給額(通常) | 支給額(15日以上) |
|---|---|---|
| A. 新規雇用(派遣含む) | 20万円 | 30万円 |
| B. 手当支給等(介護休業) | 5万円 | 10万円 |
| C. 手当支給等(短時間勤務) | 3万円 | (設定なし) |
※1事業主あたり1年度に5人まで申請可能
※「新規雇用」は直接の代替だけでなく、玉突きの人事も認められる(例:A→B→新規Cという配置)
現場でよくある疑問
社長:「手当を払うだけで助成金がもらえるんですか?既存の社員に少し多く払うだけで?」
竹田:「はい。ただし条件があります。まず、手当額が基準を満たしていること。そして、休業開始前までに業務効率化の取り組みを行うことが必須です。」
社長:「業務効率化って、具体的には?」
竹田:「業務マニュアルの作成、工程の見直し、ITツールの導入などです。これらを実施した証拠書類を提出する必要があります。単にお金をばらまくだけでは認められません。」
手当設計の具体例
賃金増額のルールは明確に決まっています。
| 支給方法 | 最低基準額 | 対象 |
|---|---|---|
| 1日あたり | 500円以上 | 介護休業の代替 |
| 月額あたり | 10,000円以上 | 介護休業の代替 |
| 1日あたり | 200円以上 | 短時間勤務の代替 |
| 月額あたり | 3,000円以上 | 短時間勤務の代替 |
※就業規則に「業務代替手当」等の規定を事前に設けることが必須
※業務代替者が複数いる場合、各人に基準額以上を支給する必要あり
業務効率化の取り組み(必須要件)
手当支給で申請する場合、休業開始前までに以下のような業務効率化の取り組みを行い、記録を残す必要があります。
- 業務マニュアル・手順書の作成
- 業務フローの見直し・簡素化
- ITツール・システムの導入
- 業務分担表の作成・更新
これは申請時に「業務改善計画書」として提出を求められます。
参考:厚生労働省「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)Q&A(2025年度版)」
6. 環境整備加算で10万円を上乗せする4つの必須措置
【この章のポイント】
研修・相談窓口・事例提供・方針周知の4つを全て実施で10万円加算(1事業主1回限り)。実施タイミングに注意:相談窓口等3つは休業開始前まで必須、研修のみ申請日までにクリアすればOK。2025年法改正により環境整備は全企業の義務。
介護離職防止を個人の問題ではなく、社内全体の文化として定着させるための評価が「環境整備加算」です。以下の4つの措置を全て実施している場合に、他の区分の助成額に上乗せして10万円が支給されます。
必ず実施すべき4つの措置
| 措置 | 具体的なアクション | 証拠書類(例) |
|---|---|---|
| 1. 研修の実施 | 全労働者(少なくとも全管理職)を対象に、仕事と介護の両立に関する研修を実施 | 研修資料、参加者名簿、実施記録 |
| 2. 相談体制の整備 | 相談窓口(担当者)を設置し、全社員に周知 | 掲示板の写真、社内メール、イントラ画面 |
| 3. 事例の収集・提供 | 自社や他社の介護休業取得事例を収集し、従業員が閲覧できるようにする | 配布資料、掲示物、社内システム画面 |
| 4. 方針の周知 | 介護休業の取得促進に関する自社の方針を全労働者に周知 | トップメッセージの掲示、周知文書 |
実施タイミングの罠
この加算で最も注意すべきは「いつまでにやるか」です。項目によってデッドラインが異なります。
| 実施期限 | 対象措置 |
|---|---|
| 休業開始前まで(厳守) | ・相談体制の整備・周知 ・事例の収集・提供 ・方針の周知 |
| 支給申請日まで(柔軟) | ・研修の実施 |
つまり、従業員から「介護で休みたい」と相談があった時点で、まだ相談窓口や方針の周知が行われていない場合、その従業員の申請で加算を受けることはできません。
法改正との連動
2025年4月の改正育児・介護休業法により、環境整備や相談窓口の設置は全企業の義務となりました。義務を果たせば自然と助成金の要件もクリアできるため、法対応の一環として早急に(誰かが休む前に)整備を完了させることを強く推奨します。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
7. 最大135万円受給のシミュレーションと戦略

【この章のポイント】
複数の区分を組み合わせることで、1人につき最大140万円の受給が可能。単に「休ませる」だけでなく、「休業中の穴埋め(業務代替)」と「復帰後の働き方(両立支援)」をセットで計画することが支給額倍増の鍵。
介護離職防止支援コースの真価は、単一の区分だけでなく、複数の区分を組み合わせることで発揮されます。実際のモデルケースで試算してみましょう。
モデルケース:中核社員が親の介護で20日間休む場合
- 対象者:勤続10年のベテラン社員(課長)
- 状況:親の介護のため連続20日間の介護休業を取得
- 代替:休業期間中、派遣社員を1名受け入れた
- 復帰後:「時差出勤」と「在宅勤務」の2制度を60日以上利用
- 環境:全社的な研修や相談窓口を整備済み
受給額の内訳
| 区分・項目 | 取り組み内容 | 支給額 |
|---|---|---|
| 区分1:介護休業 | 連続15日以上の休業を取得し、原職に復帰 | 60万円 |
| 区分2:両立支援制度 | 「時差出勤」+「在宅勤務」の2制度を導入し、60日以上利用 | 40万円 |
| 区分3:業務代替支援 | 15日以上の休業期間中に、代替要員(派遣)を新規確保 | 30万円 |
| 環境整備加算 | 4つの雇用環境整備措置(研修、窓口等)を完遂 | 10万円 |
| 合計受給額 | 140万円 |
※環境整備加算は1事業主あたり1回限り
戦略のポイント
単に「休ませる」だけでは最大60万円ですが、「休んでいる間の穴埋め(業務代替)」と「戻ってからの働き方(両立支援)」をセットで計画することで、支給額が2倍以上に増加します。
複数名申請で事業資金を確保
この助成金は1年度あたり各区分5人まで申請可能です。従業員30名規模の会社で、1年間に3名が介護に直面し、それぞれ区分1(60万円)と区分3の手当支給型(10万円)を申請した場合:
(60万円+10万円)× 3名 = 210万円
この210万円は、残された社員への特別ボーナス、業務効率化ツールの導入、外部介護相談サービスの契約など、組織全体を強くする事業資金として活用できます。
参考:厚生労働省「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」
8. 失敗しない介護支援プランと就業規則の作成術
【この章のポイント】
プランは休業開始前までに作成(遅れると一発不支給)。就業規則の委任規定(法律丸投げ)は制度未導入とみなされる。原職復帰とは「休業前と同じ部署・職務」への復帰を指し、曖昧な配置転換は不支給リスクあり。
介護離職防止支援コースの審査で労働局が最も厳格にチェックするのが「書類の日付」と「規定の文言」です。「後でまとめて作ればいい」は通用しません。
介護支援プラン作成の3つの鉄則
鉄則①:タイミングの厳守
プランは原則として「介護休業の開始前」までに作成し、従業員に交付する必要があります。これが最大の落とし穴です。
休業が終わってから慌てて作成しても手遅れです。日付を遡って作成することは虚偽申請となり、絶対に行ってはいけません。
鉄則②:面談記録との連動
プラン作成には、上司や人事担当者による面談(対面が望ましいが、電話・メール等も可)が必須です。「いつ、誰が、どのような相談を受けたか」という面談記録と、プランの内容(休業期間や利用制度)が整合している必要があります。
プラン作成で最も多い失敗を見てみましょう
プランには、単に休業期間を書くだけでなく、「業務の整理」や「引継ぎ方法」を具体的に盛り込む必要があります。「誰に、どの業務を、いつまでに引き継ぐか」が明記されているか確認してください。
鉄則③:業務引継ぎの具体性
社長:「休業が終わってから、まとめてプランを作ってもダメなんですか?書類さえ整えば…」
竹田:「はい。一発で不支給です。労働局は書類の日付を厳しくチェックします。面談記録、メールの送信日時、プランの作成日など、時系列の整合性が取れていないと、虚偽申請を疑われます。」
審査に落ちる就業規則の共通点
| 項目 | よくある不備(NG) | 正しい規定(OK) |
|---|---|---|
| 委任規定 | 「介護休業については、育児・介護休業法の定めるところによる」とだけ書き、詳細を法律に丸投げ | 自社の規定として、対象者、期間、手続き、賃金等の詳細をフルテキストで明記 |
| 原職復帰 | 休業後の復帰先について曖昧または記載なし | 「原則として、休業直前の部署および職務に復帰させるものとする」と明記 |
| 法改正対応 | 2025年4月の法改正(個別周知・意向確認等)の内容が未反映 | 最新の法改正に対応した条文(個別周知、環境整備等)を追加・改定 |
特に「委任規定(丸投げ)」は、数年前までは見逃されることもありましたが、現在は「制度が導入されていない」とみなされ、不支給の直接原因となります。必ず自社の言葉で規定化してください。
「原職等」の定義を勘違いしない
厚生労働省の指針では、原職とは以下の通り定義されています。
「休業前に勤務していた部署(組織の最小単位)であり、かつ同一の職務内容」
例えば、「営業一課」の課長が休業した場合、復帰先は「営業一課」の課長である必要があります。「営業二課」の課長や、「営業一課」の平社員では認められません。組織変更でどうしても同じポストに戻せない場合は、地位や賃金が下がらない「原職相当職」として慎重な配慮が求められます。
参考:厚生労働省「介護支援プラン策定マニュアル」
参考:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
9. 面談から申請までの実務フローと期限管理
【この章のポイント】
申請プロセスは最短でも半年近くかかる長期戦。就業規則整備→面談・プラン作成(休業開始前まで)→休業・制度利用→原職復帰・フォロー面談→3か月継続雇用→申請(復帰後3か月経過の翌日から2か月以内)。申請期間はたった2か月間。
介護離職防止支援コースの申請プロセスは長期戦です。従業員からの相談から実際の支給申請まで、最短でも半年近くかかります。以下の5つのステップを時系列で確実に実行してください。
実務フロー
申請までの流れ(全5STEP)
-
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STEP1
就業規則の整備 休業開始前まで
- 育児・介護休業法に準拠した規定を就業規則に明記
- 労働基準監督署へ届出
- 個別周知の準備(2025年4月義務化対応)
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STEP2
面談・プラン作成 休業開始前まで【厳守】
- 初回面談:介護状況や今後の働き方をヒアリング
- 介護支援プラン作成・交付
- ※プラン作成日が休業終了後だと不支給
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STEP3
休業・制度利用 休業中
- 連続5日以上(または15日以上)の介護休業取得
- 業務代替の実行(新規雇用または手当支給)
- 環境整備の完了(相談窓口・方針周知は休業開始前まで)
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STEP4
原職復帰・フォロー面談 復帰後すぐ
- 原職(休業前と同じ部署・職務)に復帰
- 復帰後の状況確認面談を実施し、記録作成
-
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STEP5
支給申請 復帰後3か月経過の翌日から2か月以内
- 3か月間の継続雇用(雇用保険被保険者として)
- 申請期間:復帰後3か月経過の翌日から2か月以内
- 申請書類を労働局へ提出
申請期限の厳格管理
最も重要なのがSTEP5の申請期限です。
- 3か月の継続雇用:復帰後、3か月間は雇用保険被保険者として継続雇用されている必要があります
- 申請期間:復帰後3か月が経過した日の翌日から起算して、2か月以内に申請
申請期間はたったの2か月間しかありません。「3か月経ってから準備しよう」ではなく、復帰した段階で書類(出勤簿、賃金台帳、プラン、面談記録など)を整理し始めるのが、確実に受給するためのコツです。
参考:厚生労働省「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)Q&A(2025年度版)」
10. 不支給になる5つの落とし穴とFAQ
【この章のポイント】
プラン作成遅れ、委任規定、給与引き下げ、在宅勤務の証明不足、原職復帰の定義履き違えが主な不支給原因。要介護1でも対象可、別居・義理の親も可、別の対象家族なら再申請可、認定待ちでも申請可能。
2025年度の改定により、提出書類の複雑さと審査の厳格さが一段と増しました。「後でなんとかなるだろう」という甘い見通しで申請し、不支給通知を受け取るケースが後を絶ちません。
不支給になる5つの落とし穴
| 落とし穴 | 詳細 |
|---|---|
| 1. プラン作成が休業終了後 | 介護支援プランは原則として休業開始前までに作成・交付が必須。休業終了後の作成は手遅れ。日付遡及は虚偽申請 |
| 2. 就業規則が委任規定のみ | 「育児・介護休業法の定めるところによる」という記述のみでは制度未導入とみなされ不支給 |
| 3. 復帰後の給与引き下げ | 本人の合意なく給与を下げたり、正当な理由なく降格させることは不当な不利益取扱いとして厳禁 |
| 4. 在宅勤務の勤務実態証明不足 | 始業・終業時刻が確認できる客観的な記録(メール、システムログ、日報など)が提出できないと不支給リスク |
| 5. 原職復帰の定義履き違え | 「休業前の部署・職務」に戻すことが原則。給与が同じでも別部署への配置転換は認められない可能性あり |
よくある質問(FAQ)
Q1:要介護1でも助成金の対象になりますか?
A:はい、対象になります。助成金の支給要件は公的な「要介護度」そのものではなく、「2週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態」にあるかどうかで判断されます。医師の診断書等で常時介護が必要と認められれば申請可能です。
Q2:別居している親や、義理の親でも申請できますか?
A:はい、可能です。対象家族の範囲は「配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母」です。同居・別居の要件はありませんので、遠方に住む親の介護のために帰省して休業する場合も対象となります。
Q3:一度助成金をもらった従業員について、再度申請することはできますか?
A:別の対象家族であれば可能です。例えば、以前に「父親」の介護で受給した従業員が、今度は「母親」の介護で休業する場合、新たなプランを作成すれば対象となります。同一の対象家族でも、過去に「介護休業」で申請し、今回は「短時間勤務」を利用する場合など、異なる区分であれば申請が認められるケースがあります。
Q4:急な介護で、事前に面談をする時間がありませんでした。
A:休業中であれば、電話やメールでの相談・調整も認められます。原則は「事前」ですが、緊急時は柔軟な対応が可能です。ただし、電話やメールでやり取りした日時や内容を必ず記録し、後からプランに反映させてください。
Q5:公的な「要介護認定」の結果がまだ出ていないのですが。
A:認定待ちの状態でも申請手続きは可能です。自治体への「要介護認定申請書の写し」や、医師の証明書、または「介護状況申立書」等を提出することで、認定結果が出る前でも対象として認められます。
参考:厚生労働省「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)Q&A(2025年度版)」
まとめ|介護離職防止は2026年の企業生存戦略

この記事では、介護離職防止支援コースについて、2025年4月の法改正対応から最大受給のための戦略まで解説しました。
2026年、少子高齢化が加速する日本において、企業の持続的成長を支えるのは「人財」です。特にベテラン層が介護を理由に職場を去ることは、中小企業にとって計り知れない損失となります。国は2025年度の法改正とともに、本助成金を拡充しました。重要ポイントを総括します。
2025年4月の法改正への完全対応が受給の前提条件。「個別周知・意向確認」の実施記録がなければ、助成金申請の土俵にも上がれません。
「長期休業」と「業務代替」の組み合わせで最大受給を狙う。休業者の穴埋めを行うことで、現場の納得感と最大140万円の事業資金を同時に確保できます。
「介護支援プラン」作成のタイミングは休業開始前まで。一日でも遅れれば不支給です。事前の面談とプラン作成を徹底してください。
職場復帰後の「原職復帰」と「3か月継続雇用」を厳守する。「戻る場所」を確約することが、従業員の安心と受給要件クリアの鍵です。
自力申請のリスクと専門家活用のメリットは明らかです。「就業規則の委任規定が不備」「プランの作成日が休業終了後」といった理由で不支給になるケースが後を絶ちません。実務コストと不支給リスクを考えれば、社会保険労務士に依頼するメリットは大きいでしょう。
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