労務管理のノウハウ
2026.04.21
【社労士が解説】freee人事労務でできることとは?中小企業の給与計算を劇的に効率化!
こんにちは。グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
「毎月の給与計算に追われて、他の業務に手が回らない」「エクセルでの手作業で、どうしても計算ミスが起きてしまう」。顧問先の経営者様から、このような切実なご相談を頻繁にいただきます。従業員が20名規模になると手作業での管理は限界に達し、給与計算が特定の担当者に集中する「属人化」が深刻な問題となります。万が一、その担当者が休職や退職すれば、給与の支払いが滞り、経営上の重大なリスクに直面しかねません。
もし、バラバラだった勤怠管理、給与計算、年末調整などが1つのシステムで繋がり、自動化されるとしたらどうでしょうか。毎月数日間かかっていた作業がわずか半日に短縮される。そんな劇的な業務効率化を実現するのが、「freee人事労務」というクラウド型ソフトです。
この記事でわかること
- 手作業やエクセル管理が抱える深刻なリスク(未払い残業代などの法的トラブル)
- freee人事労務の「統合型」システムで業務がどう効率化されるか
- 給与計算の自動化から年末調整のペーパーレス化まで、具体的な機能と注意点
- 失敗しないための導入の鉄則
毎月の終わりの見えない手作業ストレスから解放され、本来注力すべき事業資金の確保や設備投資に専念できる環境を手に入れましょう。
01 中小企業の人事労務が抱える「3つの限界」

従業員が20名規模に成長してくると、創業期から続けてきた人事労務の管理手法が限界を迎えます。「タイムカードで打刻し、月末にエクセルへ手入力して集計、別の給与計算ソフトへ転記する」。このような業務ごとにシステムがバラバラな運用を続けていると、企業経営を揺るがしかねない深刻なリスクが潜んでいます。
1.1 💰 この章の損得チェック
- エクセル管理を続けると、給与ミスによる従業員の信頼喪失と未払い残業代リスクが発生
- 属人化した業務は、担当者の突然の休職・退職で給与遅配という経営リスクに直結
- 法改正への対応遅れは、労働基準監督署からの是正勧告や罰則に繋がる可能性
1.2 エクセル管理や手作業による「ヒューマンエラー」の恐怖
システムがバラバラな状態での労務管理は、必然的に「転記」や「手入力」といった手作業を発生させます。どんなに優秀な担当者でも、毎月数十人分の労働時間を集計し、残業時間や深夜割増を手作業で計算していれば、必ずどこかでミスが生じます。
労働時間の集計を間違えれば、直結して給与計算のミスに繋がります。また、有給休暇の取得日数や残日数の管理をエクセルで手動管理している場合、更新漏れによる管理ミスが発生しやすく、従業員からの不満やクレームに発展する恐れがあります。手作業によるヒューマンエラーは、単なる計算ミスにとどまらず、従業員の会社に対する信頼を大きく損なう原因となるのです。
1.3 給与計算や年末調整の「特定担当者への属人化」問題
手作業やエクセル管理が常態化すると、「このエクセルシートは何枚あるのか」「勤怠データをどうやって給与計算に反映させているのか」といった業務のノウハウが、特定の担当者の頭の中にしか存在しなくなります。担当者に聞かないと状況が分からない、これを業務の「ブラックボックス化(属人化)」と呼びます。
「担当者が急に体調を崩して休んでしまい、やり方が誰にも分からない。しかし給料日は目前に迫っている」「年末調整の時期なのにどう処理していいか分からない」。このような事態は決して珍しくありません。特定の個人のスキルや記憶に依存した管理体制は、企業にとって非常に脆弱であり、早急に改善すべき課題です。
1.4 法改正への対応遅れが招く「未払い残業代」や法的制裁リスク
労働基準法や社会保険に関する法令は、毎年のように改正されます。社会保険料率の変更、最低賃金の引き上げ、残業時間の上限規制、有給休暇の取得義務化など、企業が守るべきルールは複雑化する一方です。
手作業やエクセルで管理している場合、これらの法改正情報を担当者自身がキャッチアップし、手動で計算式や設定をアップデートしなければなりません。もしアップデートが漏れてしまった場合、悪意がなくても「未払い残業代」が発生してしまったり、法定帳簿の不備で労働基準監督署からの是正勧告を受けたりするリスクがあります。是正勧告を放置すれば、最悪の場合は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰に発展する可能性もあります。
| 課題(限界) | 具体的な状況 | 発生しうる経営リスク |
|---|---|---|
| ヒューマンエラー | タイムカードからエクセルへの手入力、別ソフトへの転記 | 給与の支払いミス、有休管理ミスによる従業員からのクレーム |
| 業務の属人化 | 特定の担当者しかエクセルの計算式や業務フローを把握していない | 担当者の突然の休職・退職による業務停止(給与遅配など) |
| 法改正への対応遅れ | 社会保険料率の変更や労働基準法の改正に手動で対応している | 未払い残業代の発生、労働基準法違反による行政指導や罰則 |
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
02 freee人事労務とは?中小企業に最適な「統合型」システム
2.1 💡 経営者が押さえるべきポイント
- 従業員情報を一度登録すれば、すべての業務に自動連携。転記ミスがゼロに
- 従業員100人未満の企業で売上金額シェアNo.1。中小企業向けの低価格設計
- クラウド型のため法改正や保険料率の改定に自動対応。担当者の負担なく法令遵守
前章で挙げたような、バラバラのシステムや手作業による「限界」を突破するために開発されたのが「freee人事労務」です。freee人事労務は、クラウド型の人事労務ソフトであり、勤怠管理や給与計算、年末調整など、多岐にわたる労務業務を一つにまとめた「統合型システム」であることが最大の特徴です。
2.2 バラバラな労務システムを一つに!「一気通貫」のメリット
従来の労務管理では、「従業員情報を管理するエクセル」「勤怠管理システム」「給与計算ソフト」といったように、機能ごとに別々のソフトを使い分けるのが一般的でした。しかし、freee人事労務はこれらを一つにまとめて運用できる統合型のソフトです。
その中核となるのが「人事マスター」と呼ばれる機能です。ここに、従業員の氏名、住所、家族構成、基本給や通勤手当などの情報を一度登録すれば、そのデータがすべての業務に連携します。従業員が結婚して苗字が変わったり、引っ越しで交通費が変わったりした際、従来なら複数のシステムを一つずつ修正しなければなりませんでした。しかし、freee人事労務であれば、人事マスターの情報を更新するだけで、給与計算から社会保険の手続きまで、すべての処理に自動で反映されます。この「一気通貫」の仕組みにより、転記ミスを防ぎ、作業時間を劇的に短縮できるのです。
2.3 高価な自社開発システムは不要!低価格で始められる魅力
複数の業務を一つのシステムでカバーする「統合型システム」は、以前は大企業向けのものでした。自社で開発したり、導入に数百万円もの費用がかかったりするのが当たり前の世界だったのです。しかし、freee人事労務は、この統合型システムを「中小企業向け」に低価格で作り上げた点が画期的です。
給与計算業務を外部(社労士事務所や代行業者など)に委託している場合、ベース料金に加えて従業員1人あたり約1,000円ほどの費用がかかることが多く、20名規模の企業であれば毎月3万円以上のランニングコストが発生します。しかも、外注先がやってくれるのは「給与計算と明細の発行」のみで、日々の勤怠集計や人事情報の管理は自社で行わなければならないケースがほとんどです。freee人事労務を導入してシステム利用料を支払ったとしても、勤怠管理から給与計算、入退社手続きまでを社内で一貫して行える「内製化」が実現できるため、結果的に大幅なコストダウンと業務改善に繋がります。
2.4 クラウド型だから法改正や保険料率の改定にも自動対応
freee人事労務はクラウド型のサービスであるため、自社でサーバーを用意したり、ソフトウェアをパソコンにインストールしたりする必要がありません。インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも、常に最新の状態で利用できます。
労務担当者にとって大きな負担となるのが、毎年のように行われる法改正や社会保険料率の変更、税制改正への対応です。エクセルや買い切り型のソフトを使っている場合、自力で情報を集めて数値を変更したり、手動でアップデート作業を行ったりしなければなりません。一方、freee人事労務では、法令や料率の変更があればシステム側で自動的にアップデートが適用されます。担当者の負担なく、常に最新の法令に準拠した運用が可能になるため、「気付かないうちに古い保険料率で給与計算をしてしまっていた」といったコンプライアンス違反のリスクを未然に防ぐことができるのです。
| 比較項目 | 従来型のバラバラな管理 | freee人事労務(統合型・クラウド型) |
|---|---|---|
| データ管理 | システムごとに二重・三重の入力・転記が必要 | 人事マスターで一元管理(一気通貫) |
| コスト | 給与計算の外注費、複数システムの利用料 | 中小企業向けの低価格な月額料金(内製化でコストダウン) |
| 法改正対応 | 担当者が自力で確認し、手動で設定変更 | クラウド側で自動アップデート(法令遵守) |
03 freee人事労務で「できること」完全マニュアル

3.1 💡 経営者が押さえるべきポイント
- スマホ打刻で勤怠集計が自動化。有給休暇も自動管理で「年5日取得義務」に対応
- 給与計算は勤怠データと自動連携。転記ミスがゼロになり、Web明細で配付コストも削減
- 年末調整はスマホで完結。書類の配付・回収の手間が5分の1に削減
freee人事労務は、人事・労務担当者が毎月(あるいは毎年)苦労している業務を、驚くほどスムーズにしてくれます。ここでは、システムを導入することで具体的に「何ができるようになるのか」、実務に直結する5つの主要機能について解説します。
3.2 勤怠管理の自動化と有給休暇の適正管理(スマホ打刻対応)
タイムカードの打刻漏れ確認や、月末の労働時間の集計作業は、担当者にとって大きな負担です。freee人事労務では、PCやスマートフォン、タブレットからいつでもどこでも出退勤の打刻が可能です。スマホ打刻の場合は位置情報の取得もできるため、直行直帰の営業社員やテレワークの従業員の管理にも適しています。
さらに、残業や遅刻・早退の申請から承認までもWeb上で完結するため、紙の申請書を持ち回る必要がありません。そして労務管理上非常に重要なのが「有給休暇の管理」です。システム上で出勤・欠勤・有休取得をカウントし、有給休暇の付与や2年間の保持期間などを自動で計算してくれます。2019年4月の法改正で義務付けられた「年5日の有給休暇取得」や「年次有給休暇管理簿」の作成にも対応しているため、従業員からの「あと何日休めますか?」という問い合わせにも即座に正確に答えることができます。
3.3 ワンクリックで完了?給与計算・賞与計算の自動化
勤怠管理機能と完全に連動しているため、集計された労働時間や残業時間のデータがそのまま給与計算に反映されます。これにより、毎月発生していた「エクセルへの転記作業」と「電卓での検算」が不要になります。
「基本給」や「定額手当」は一度登録すれば自動で引き継がれますし、複雑な雇用保険料や所得税、住民税の計算もシステムが自動で行います。特に「協会けんぽ」に加入している場合、都道府県を設定しておけば毎年の料率変更に自動対応し、40歳になった従業員の介護保険料も自動で追加徴収される仕組みになっています。計算結果はワンクリックで「Web明細」として発行され、従業員はスマホアプリ等からいつでも確認できるため、明細書の印刷・封入・手渡しというアナログな作業から完全に解放されます。
3.4 ペーパーレスで圧倒的時短!スマホで完結する年末調整
労務担当者にとって、1年で最も憂鬱な時期が「年末調整」ではないでしょうか。大量の書類を印刷・配布し、書き間違いの訂正を依頼し、控除証明書をかき集める……。freee人事労務では、この一連の作業がスマートフォンで完結します。
従業員は、自分のスマホやPCに送られてくる質問にアンケート形式で答えていくだけで入力が完了します。生命保険などの控除証明書もスマホのカメラで撮影して画像を添付できるため非常に手軽です。管理者側は、誰が未提出かがダッシュボードで一目でわかり、システム上から「再提出依頼」や「催促メール」を簡単に送ることができます。これにより、年末調整にかかる業務時間を従来の約5分の1に削減することも可能です。
3.5 入退社手続きとマイナンバーの安全なクラウド管理
新入社員が入社した際、従来は手書きの書類で個人情報を集めていましたが、freee人事労務では従業員本人にスマホから直接情報を入力してもらうことが可能です。入力された情報(氏名、住所、家族構成など)は「人事マスター」に登録され、そのまま社会保険や雇用保険の「資格取得届」といった役所への提出書類の自動作成に連携します。
また、取り扱いが厳格に定められている「マイナンバー」についても、金融機関並みの万全なセキュリティ体制のもと、クラウド上で安全に収集・保管・破棄まで完結できます。紙のコピーを金庫で鍵をかけて保管するプレッシャーから解放され、必要な保険手続き書類には自動でマイナンバーが印字されるため、安全かつ効率的です。
3.6 法定三帳簿(労働者名簿・出勤簿・賃金台帳)の自動作成
労働基準法では、企業に対して「労働者名簿」「出勤簿」「賃金台帳」という法定三帳簿を適正に作成し、原則5年間保存することを義務付けています。労働基準監督署の調査(臨検)が入った際、真っ先に提出を求められるのがこれらの書類です。
これらを別々のシステムやエクセルで作成していると、記載内容に矛盾が生じたり、更新が漏れたりするリスクがあります。しかし、freee人事労務であれば、日々入力される人事情報・勤怠情報・給与情報をもとに、法令に準拠したフォーマットで法定三帳簿が自動的に作成・保存されます。いざという時の行政調査にも、ボタン一つで出力して慌てることなく対応できるのは、経営者にとって非常に大きな安心材料となります。
ここで、現場でよくある疑問を見てみましょう。
社長: 「スマホで勤怠を打刻するのは便利そうだけど、うちの現場は工場だから、みんながスマホを持ち歩いているわけじゃないんだよね。どうすればいい?」
竹田先生: 「その場合は、事務所のPCやタブレットを共用の打刻端末として設置する方法があります。従業員ごとにログインIDを発行する必要もなく、名前を選択するだけで打刻できる設定も可能ですよ。」
社長: 「なるほど。でも、給与計算の自動化って言っても、うちは毎月手当の金額が変わる従業員がいるんだけど、それも対応できる?」
竹田先生: 「はい、変動する手当は毎月個別に金額を入力できます。ただし、あまりに複雑なルールだとシステムでの自動化が難しくなるので、導入を機に手当のルールをシンプルに整理することをおすすめします。結果的に運用が楽になり、従業員にも説明しやすくなりますよ。」
| 業務機能 | freee人事労務での処理方法 | 現場のメリット(効率化の効果) |
|---|---|---|
| 勤怠・有給管理 | スマホ/PC打刻、残業等のWeb申請 | 集計作業のゼロ化、正確な有休残日数の把握 |
| 給与・賞与計算 | 勤怠連携による自動計算、料率の自動更新 | 転記ミス・計算ミスの撲滅、Web明細で配付の手間を削減 |
| 年末調整 | 従業員のスマホ入力、証明書の画像添付 | 書類の配付・回収の手間削減、進捗のリアルタイム把握 |
| 入退社・マイナンバー | 従業員本人がスマホ入力、資格取得届の作成 | 書類作成の自動化、最高レベルのセキュリティでの情報保管 |
| 法定三帳簿の作成 | 人事・勤怠・給与データからの自動生成 | 労働基準法違反リスクの回避、労基署調査へのスムーズな対応 |
参考:freee人事労務 公式サイト、厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得」
04 【注意点】freee人事労務で「できないこと」と導入の壁
4.1 ⚠️ 導入前に知っておくべき注意点
- 締め日途中での給与変更や、毎月変動する所定労働時間での計算は手動対応が必要
- 組合健保の料率変更や定額制健保の介護保険追加は自動対応されない
- システムを自社ルールに合わせるのではなく、自社ルールをシステムに合わせる発想転換が必要
freee人事労務は非常に便利で強力なツールですが、あらゆる企業の独自ルールを100%カバーできる「魔法の杖」ではありません。特に、長年エクセルや手作業で「自社ならではの柔軟な(あるいは少し変則的な)運用」を続けてきた中小企業ほど、導入時に壁にぶつかる傾向があります。ここでは、freee人事労務が「苦手とすること」や「できないこと」を明確にし、失敗しないための心構えをお伝えします。
4.2 独自の複雑な給与体系や変則的なルールへの対応の難しさ
freee人事労務は、一般的な法令に基づいた標準的な給与計算には非常に強い一方で、イレギュラーな計算処理には対応しきれない部分があります。具体的には、以下のような処理は手動での対応や別計算が必要になります。
締め日途中での給与額の変更:月の途中で昇給があった場合など、締め日の途中で給与額が変更になるケースの自動計算には対応していません。この場合は別途計算を行う必要があります。
毎月の所定労働時間が変動する場合の割増単価計算:月ごとに所定労働時間を細かく変更して残業代の単価を計算している場合、freee人事労務では設定変更に手間がかかります。月平均の所定労働時間を用いて計算するよう、ルールの見直しをおすすめします。
一部の保険制度への手動対応:「協会けんぽ」であれば保険料率の変更や40歳到達時の介護保険の追加は自動ですが、「組合健保」の場合は料率や金額の変更を手動で行う必要があります。また、「定額制の健康保険」の介護保険追加も手動設定が必要です。
一部の特殊な計算・書類:退職金の計算には対応していません。また、賞与を支給しなかった場合の「賞与不支給報告書」の作成もできません。月の途中での入退社時の日割り計算についても、フレックスタイム制など一部の働き方では自動計算の対象外となる場合があります。
4.3 導入時に直面する「自社の労務ルールの見直し」の必要性
中小企業でよくあるのが、「昔からこのやり方だから」という理由で、法律の原則から少し外れたグレーな独自の計算ルールや、複雑すぎる手当の支給条件を残してしまっているケースです。
freee人事労務は、労働基準法などの法令に則った「正しい労務管理」を行うためのクラウドシステムです。そのため、「システムを自社の変則的なルールに合わせてカスタマイズする」という考え方ではなく、「freee人事労務の標準機能に合わせて、自社の業務フローやルールを見直す(標準化する)」という発想の転換が不可欠になります。導入は、属人化して複雑に絡み合った自社のローカルルールを整理し、シンプルで正しい労務管理へと生まれ変わる絶好のチャンスでもあるのです。
4.4 移行時の「並行運用」期間の重要性
「来月からすぐにfreeeだけで給与計算をやろう!」と焦るのは禁物です。どれほど優れたシステムでも、初期設定(従業員情報、手当の条件、保険料の設定など)が間違っていれば、正しい計算結果は出力されません。
システム導入時には、必ず「並行運用」の期間を設けることが鉄則です。これまで使っていたエクセルや従来の給与計算システムと、freee人事労務の両方で1〜2ヶ月ほど並行して給与計算を行い、計算結果に1円のズレもないか、間違いがないことをしっかりと確認しましょう。このテスト期間を丁寧に経ることで、本稼働後の支払いトラブルを確実に防ぐことができます。
| 項目 | freee人事労務で「できる」こと | freee人事労務では「できない(手動対応が必要)」こと |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 協会けんぽの料率変更・介護保険追加の自動対応 | 組合健保の料率変更、定額制健保の介護保険追加 |
| 給与・割増計算 | 月平均所定労働時間に基づく残業代の自動計算 | 締め日途中での給与変更、毎月変動する所定労働時間での計算 |
| 入退社・その他 | 雇用保険の離職証明書作成(データ作成まで) | 退職金の計算、賞与不支給報告書の作成 |
| 税務関係 | 所得税徴収高計算書の作成(画面上でのデータ作成) | 所得税徴収高計算書の「紙での印刷」(専用用紙へ手書き転記が必要) |
05 【事例で解説】導入で劇的に変わった中小企業の姿

ここまで機能や注意点を解説してきましたが、「実際に導入すると、現場はどう変わるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。ここでは、アナログな管理からfreee人事労務への移行を果たし、劇的な業務改善を実現した中小企業の典型的な事例を2つご紹介します。
5.1 事例①:毎月の給与計算にかかる時間が3日から半日に削減
【導入前の課題】
従業員数20名規模の製造業A社では、毎月末になるとタイムカードを回収し、担当者がエクセルに手入力して労働時間を集計していました。さらに、そのデータを別の給与ソフトに手作業で転記していたため、ダブルチェックの確認作業も含めると、毎月の給与計算に丸3日を費やしていました。
【導入後の変化】
freee人事労務を導入し、従業員は各自のスマートフォンやPCで出退勤を打刻する運用に変更しました。打刻データは自動で集計され、残業時間や深夜割増などもそのまま給与計算に連携されるようになりました。転記作業と検算の手間が完全になくなり、3日かかっていた作業がわずか半日に短縮されました。公式サイトでも「5日の業務がたった1日で終わる」と謳われている通り、一気通貫のシステムによる時短効果は絶大です。
5.2 事例②:従業員のスマホ活用で明細配布や年末調整の回収の手間がゼロに
【導入前の課題】
小売業B社では、毎月の給与明細を紙に印刷して封筒に入れ、各店舗の従業員へ手渡ししていました。また、年末調整の時期には大量の申告用紙を配付し、書き間違いの修正依頼や、控除証明書の回収忘れによる催促に追われ、担当者は通常業務がストップするほど疲労困憊でした。
【導入後の変化】
freee人事労務の導入により、給与明細は「Web明細」へと切り替わりました。従業員は自分のスマホからいつでも明細を確認できるようになり、印刷や封入、配付の手間とコストが完全にゼロになりました。
さらに、年末調整も従業員がスマホのアンケート形式で入力し、生命保険などの控除証明書はカメラで撮影して添付するだけで完了するようになりました。管理者側は誰が未提出かをリアルタイムで確認し、システム上から催促できるため、年末調整にかかる業務時間が従来の5分の1に激減しました。実際のユーザーからも「アナログな書類はなし」「管理者も従業員もなくてはならないツール」と高く評価されています。
| 業務内容 | 導入前(ビフォー) | 導入後(アフター) |
|---|---|---|
| 勤怠・給与計算 | タイムカードを手計算し、別ソフトへ転記(3日間) | スマホ打刻から給与計算まで自動連携(半日) |
| 給与明細の配付 | 紙に印刷、封筒に入れて各従業員へ手渡し | Web明細を自動発行、スマホでいつでも確認可能 |
| 年末調整の回収 | 紙の書類を配付・回収し、手作業で内容をチェック | スマホ入力・画像添付でペーパーレス化、進捗も自動管理 |
06 導入を成功させるための3つの鉄則
6.1 🚀 成功の鍵となる3つのポイント
- システムに自社ルールを合わせる。就業規則と賃金規程の整合性を確認し、標準化する
- 初期設定は労務のプロ(社労士等)の知見を借りる。設定ミスは全従業員の給与計算に影響
- 従業員への説明とマニュアル化を徹底する。ITツールへの抵抗感を減らし、スムーズに定着
freee人事労務は直感的に操作できる優れたシステムですが、導入さえすれば自動的にすべてが上手くいくわけではありません。導入を失敗させず、確実に業務効率化の恩恵を受けるためには、いくつか越えなければならないハードルがあります。ここでは、労務のプロである社労士の視点から、導入を成功に導くための「3つの鉄則」を解説します。
6.2 鉄則①:自社の「就業規則」とシステムの整合性を確認する
第4章でも触れましたが、システムの導入は自社の労務ルールを見直す絶好の機会です。freee人事労務は労働基準法などの法令に則って設計されているため、自社の長年の「ローカルルール」がシステムの設定に当てはまらないケースが多々あります。
この時、「どうにかしてシステムを自社のルールに合わせよう」と無理な設定をするのは危険です。逆に「システムの標準機能に合わせて、自社の業務フローや賃金規程(就業規則)を変更する」というアプローチが正解です。手当の支給要件をシンプルにしたり、変則的な労働時間制度を見直したりすることで、結果的に運用が楽になり、職場環境の整備も強化されます。
6.3 鉄則②:初期設定は労務のプロ(社労士等)の知見を借りる
クラウドソフトは「初心者でも簡単」と謳われることが多いですが、それは「日常の運用」に限った話です。実は、最も難易度が高く、かつ絶対にミスが許されないのが「初期設定」です。
従業員の基礎情報、社会保険の等級、雇用保険の適用有無、基本給や各種手当の計算式など、初期設定を一つでも間違えると、その後の給与計算がすべて間違った結果になってしまいます。特に、割増賃金の単価から除外できる手当と除外できない手当の判定などは、専門的な知識が必要です。そのため、導入時の初期設定や規程の整備については、自力だけで解決しようとせず、私たち社会保険労務士や導入支援の専門家のサポートを受けることを強くおすすめします。
6.4 鉄則③:従業員への説明とマニュアル化を徹底する
freee人事労務を導入すると、従業員自身がスマートフォンやPCを使って出退勤を打刻したり、Web明細を確認したり、年末調整のアンケートに入力したりする機会が増えます。これは管理者側の負担を大きく減らす一方で、ITツールに不慣れな従業員にとっては「やり方が分からない」というストレスに繋がる可能性があります。
そのため、システムを切り替える前に、全従業員に対して「なぜ新しいシステムを導入するのか」「具体的に何が変わるのか」を丁寧に説明する場を設けましょう。また、画面のスクリーンショットを用いた簡単な操作マニュアルを用意したり、社内で「操作に詳しいリーダー」を育成したりすることで、従業員からの問い合わせを減らし、スムーズな定着を図ることができます。
導入フロー
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STEP1
現状分析と要件整理
- 自社の給与体系・手当・労働時間制度を洗い出す
- freeeの標準機能で対応可能か確認する
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STEP2
就業規則の見直し
- システムの標準機能に合わせて賃金規程・手当のルールをシンプルに整理する
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STEP3
初期設定 専門家支援推奨
- 従業員情報・社会保険等級・給与計算式などを正確に設定する
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STEP4
並行運用 1〜2ヶ月
- 従来のシステムとfreeeの両方で給与計算を実施
- 計算結果を1円単位で照合する
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STEP5
従業員への説明会・マニュアル配布
- スマホ打刻やWeb明細の使い方を従業員に周知する
- 操作マニュアルを配布する
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STEP6
本稼働
- freeeのみでの給与計算に切り替える
- ※初月は特に注意深く計算結果を確認すること
| 鉄則 | 実施すべき具体的なアクション | 期待される効果 |
|---|---|---|
| ①就業規則の整合性確認 | 賃金規程とシステムの計算ロジックのすり合わせ、ルールのシンプル化 | 運用ルールの標準化、法違反リスクの解消 |
| ②プロの知見の活用 | 社労士等の専門家による初期設定の代行・チェック | 設定ミスによる給与計算エラーの完全防止 |
| ③従業員への説明・周知 | 事前説明会の実施、簡易マニュアルの配布 | スムーズな社内定着、従業員からの質問・クレーム削減 |
07 よくある質問(FAQ)
freee人事労務の導入にあたり、経営者様やご担当者様からよくいただくご質問とその回答をまとめました。自社の運用に当てはめてご検討の際の参考にしてください。
Q1. 今使っているタイムカードや他社の勤怠システムと連携できますか?
A. はい、連携可能です。
freee人事労務は自社内での勤怠管理機能(スマホ打刻など)を備えていますが、「今のタイムカードの運用を変えたくない」「すでに他社の高機能な勤怠システムを導入している」というケースもあるでしょう。
freeeはAPI連携に力を入れており、「KING OF TIME」「Touch On Time」「ハーモス勤怠」といった主要な外部の勤怠管理システムとスムーズにデータを連携させることが可能です。他社システムで集計した労働時間のデータをfreee人事労務に取り込み、給与計算以降のプロセスだけをfreeeで自動化するという「いいとこ取り」の運用も、中小企業ではよく行われています。
Q2. 従業員がスマホやPCに不慣れな場合、どうすればいいですか?
A. 直感的な画面設計がされていますが、管理者による代理入力も可能です。
freee人事労務は、初めて使う従業員でも直感的に操作できるよう、年末調整などは「アンケートに答えるような形式」で画面が設計されています。
それでもどうしてもスマートフォンやPCの操作が難しい従業員がいる場合、管理者が従業員の代わりにシステムへデータを入力することも可能です。また、給与明細についても、全員を強制的にWeb明細にするのではなく、必要な従業員にだけは紙に印刷して配付するといった柔軟な対応が可能です。最初は管理者の給与計算の効率化を優先し、従業員へのスマホ活用は少しずつ浸透させていくという段階的なアプローチをおすすめします。
Q3. セキュリティやマイナンバーの管理は本当に安全ですか?
A. 金融機関レベルのセキュリティで守られており、紙で保管するよりも安全と言えます。
マイナンバーを含む従業員の個人情報をクラウド上に置くことに、不安を感じる経営者様もいらっしゃいます。しかし、freee人事労務は「金融機関並みの万全なセキュリティ体制」を敷いており、通信の暗号化や厳重なデータ管理が行われています。
マイナンバーの情報は、システム上で権限を与えられた管理者しか閲覧できない仕組みになっています。実は、紙のコピーをバインダーに挟んで鍵付きの金庫で保管し、必要な時に取り出して使う……といった物理的な管理方法のほうが、紛失や持ち出し、廃棄漏れといったヒューマンエラーによる漏洩リスクが高いのです。収集から保管、そして法定期間経過後の破棄までをシステム上で完結できるクラウド管理のほうが、はるかに安全で管理コストもかかりません。
08 まとめ:属人化を解消し、変化に強い組織を作るために
この記事では、freee人事労務でできることや導入のメリット、注意点について解説しました。
一気通貫の統合システム:勤怠管理、給与計算、年末調整、入退社手続きまでを1つのシステムで完結でき、転記の手間とミスがなくなります。
圧倒的な時短とペーパーレス化:スマホでの打刻やWeb明細、年末調整のアンケート入力により、毎月・毎年の業務時間を劇的に削減できます。
職場環境の整備:クラウド型のため、法改正や社会保険料率の改定にも自動で対応し、法定三帳簿も自動作成されます。
freee人事労務は、経営者や労務担当者を「終わりの見えない手作業」から解放し、属人化というリスクを解消する強力な武器になります。しかし、最も重要かつ危険なのが「初期設定」です。自力で設定を行い、割増賃金の計算から除外すべき手当の設定などを間違えると、全従業員の給与計算が狂い、未払い残業代の発生など重大な法的トラブルに直面する恐れがあります。
「自社の手当はfreeeで対応できるのか?」「初期設定に不安がある」と迷われたら、手遅れになる前に私たち専門家にご相談ください。貴社の現状をヒアリングし、労務のプロとしてスムーズな導入と定着を全力でサポートします。
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