助成金最新コラム
2026.06.19
退職金制度で社会保険料を削減|企業型DC・DB・中退共の選び方と導入効果
こんにちは。グロウライフ社会保険労務士法人 労務コンサルタントの竹田です。
「退職金制度を導入したいが、どの制度を選べばよいのか分からない」「社会保険料の負担が年々重くなり、キャッシュフローを改善したい」――こうしたお悩みを抱える中小企業の経営者は少なくありません。退職金制度には中退共、確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(企業型DC)の3つの代表的な選択肢がありますが、それぞれの仕組みや財務効果は大きく異なります。特に企業型DCは、税金だけでなく社会保険料の負担も軽減できる強力な手段として注目されています。
この記事でわかること
- 企業型DC・DB・中退共の基本的な違いと、自社に最適な制度の選び方
- 企業型DC導入による年間最大150万円規模の社会保険料削減の仕組み
- 15名・30名規模企業での具体的なシミュレーションと導入効果
- 運用リスクの所在(会社負担か従業員負担か)と制度選択のポイント
この記事では、退職金制度の基本から具体的な削減効果、導入フローまでを網羅的に解説します。自社にとって最適な退職金制度を選び、確実なキャッシュフロー改善を実現するための判断材料としてお役立てください。
企業型DCの導入で実現する最大150万円の社会保険料削減とキャッシュフロー改善
この章でわかること
- 企業型DCの「三重優遇」が生み出す税金・社会保険料の削減効果
- 30名規模の企業で年間約150万円のコスト削減が可能になる仕組み
- 削減されたコストを事業投資や採用コストの削減・定着率の改善に回す好循環
会社と役員・従業員の「三重優遇」がもたらす圧倒的なコスト削減効果
企業型DC(企業型確定拠出年金)の最大の強みは、「拠出・運用・受取」の各フェーズで税制優遇を受ける「三重優遇」にあります。会社が毎月拠出して社員個人の口座に積み立てる掛金は全額損金となり、所得税や社会保険料の負担を適正に抑えられます。特に、役員報酬の一部をDC掛金に設定した場合、会社と個人の双方で高いコスト削減効果を発揮します。
企業型DCの「三重優遇」の流れ
| 拠出時:全額損金で所得税・社会保険料負担を軽減 |
| ↓ |
| 運用時:運用益は非課税で複利運用される |
| ↓ |
| 受取時:退職所得控除により税負担を軽減 |
例えば、月給50万円の役員が15年間勤務するケースを想定します。役員報酬の一部(月額5万円)を企業型DCの掛金として設定した場合と、全額を役員報酬として受け取った場合を比較すると、その差は歴然です。
| 項目(月給50万円・15年) | 導入なし(全額役員報酬) | 企業型DC導入(掛金5万円) | 差額(軽減効果) |
|---|---|---|---|
| 所得税+住民税 | 約1,080万円 | 約970万円 | 約110万円 |
| 社会保険料(労使合計) | 約1,350万円 | 約1,125万円 | 約225万円 |
| 合計負担額 | 約2,430万円 | 約2,095万円 | 約335万円 |
このように、15年間で合計約335万円もの負担軽減が実現します。拠出時に所得税・住民税・社会保険料が減り、運用時には非課税で資産が育ち、受取時には退職所得控除で税負担が軽減される――この三重の効果が、企業型DCの圧倒的な優位性を生み出しています。
従業員30名の企業なら年間約150万円の負担軽減も可能に
組織全体で「選択制」の企業型DCを導入すると、その効果はさらに大きくなります。例えば、役員3名・従業員27名(計30名)の企業で、全員が役職に応じた掛金(月額1.5万〜5万円)を選択したケースを想定します。
30名規模企業のシミュレーション
| 対象層 | 人数 | 月額掛金 | 年間掛金総額 | 会社負担軽減額 |
|---|---|---|---|---|
| 役員 | 3名 | 5万円 | 180万円 | 約27万円 |
| 管理職等 | 2名 | 5万円 | 120万円 | 約18万円 |
| 一般社員 | 5名 | 3万円 | 180万円 | 約27万円 |
| パート等 | 20名 | 1.5万円 | 360万円 | 約54万円 |
| 合計 | 30名 | ― | 840万円 | 約126万円 |
この場合、会社の社会保険料負担は年間約126万円軽減されます。さらに、役員個人の負担軽減分(約27万円)と合わせると、年間約153万円の総合的なコスト削減が実現します。30名規模の企業にとって、年間150万円超のキャッシュフロー改善は極めて大きなインパクトです。
Q:選択制DCとは何ですか?
A(竹田): 選択制DCとは、従業員が自分の給与の一部を企業型DCの掛金として拠出するか、そのまま給与として受け取るかを選べる仕組みです。会社が新たなコストを負担することなく、既存の給与を再配分する形で導入できるため、中小企業にとって導入しやすい制度設計となっています。
Q:なぜ社会保険料が削減されるのですか?
A(竹田): 企業型DCの掛金は、社会保険料の算定基礎となる「標準報酬月額」から除外されます。そのため、掛金分だけ標準報酬月額が下がり、結果として会社と従業員の双方の社会保険料負担が軽減される仕組みです。
浮いたコストを事業へ回し、キャッシュフロー改善を図る好循環
企業型DCは福利厚生の枠を超え、資金繰りを安定させる強力な手段として機能します。社会保険料の適正化で削減されたコストは手元資金として残り、確実なキャッシュフロー改善に直結します。確保した資金を新たな事業への投資や、採用コストの削減・定着率の改善へ回すことで、長期的な経営基盤の強化が可能になります。
例えば、年間150万円のコスト削減が実現した場合、以下のような活用が考えられます。
設備投資の原資として活用し、業務効率化を推進
研修費の助成に充て、社員のスキルアップを支援
採用活動の強化により、優秀な人材を確保
賞与や福利厚生の拡充で、定着率の改善を図る
このように、企業型DCによって生まれたキャッシュフローは、単なるコスト削減にとどまらず、企業の成長を加速させる「攻めの投資」へと転換できます。社会保険料の適正化と事業成長の好循環を生み出すことで、持続可能な経営体制の構築が可能になります。
中小企業の退職金制度はどう選ぶ?代表的な3制度の仕組みを徹底比較

この章でわかること
- 退職金を社外に積み立てる3つの制度(中退共・DB・企業型DC)の役割
- 管轄・運用主体・給付形態・掛金上限の基本的な違い
- 自社の課題に合わせた制度選びの3つの判断軸
外部機関を活用して経営リスクを回避する3つの選択肢
自社内で退職金を積み立てる場合、資金の枯渇や将来の支払い負担が大きな問題となります。そこで、社外の機関を利用して外部に積み立てる手法が主流です。これにより、将来の支払いを保証しつつ、会社側の経営リスクの回避を図ることができます。
代表的な選択肢として、以下の3つが挙げられます。
中小企業退職金共済(中退共):国の機関(勤労者退職金共済機構)が運営する、中小企業向けのシンプルな退職金制度
確定給付企業年金(DB/はぐくみ基金等):将来の給付額があらかじめ約束されている年金制度
企業型確定拠出年金(企業型DC):従業員自身が運用先を選び、自己責任で資産形成を行う制度
これらはいずれも外部機関に積み立てる仕組みであるため、会社の倒産時にも従業員の退職金資産が保全されるという共通の特徴があります。中小企業経営者にとって、自社内積立と比較して将来の支払いリスクを大幅に抑えられる点が、大きなメリットです。
中退共・DB(はぐくみ基金)・企業型DCの基本的な違い
これら3制度は、管轄や運用主体、給付の形態が異なります。自社にとってどの制度が最も適しているかを把握するため、以下の基本概要を押さえておくことが重要です。
| 項目 | 中退共 | 確定給付企業年金(DB) | 企業型確定拠出年金(DC) |
|---|---|---|---|
| 管轄 | 厚生労働省(機構) | 厚生労働省(企業年金連合会) | 厚生労働省(国民年金基金連合会) |
| 運用主体 | 勤労者退職金共済機構 | 信託銀行や生保など(基金) | 従業員自身(金融機関経由) |
| 給付の形態 | 退職一時金のみ | 一時金または年金 | |
| 掛金の上限 | 従業員:月3万円 役員:不可 |
基金により規定(例:給与の20%) | 従業員・役員ともに月5.5万円 |
中退共は国がサポートするシンプルな制度で、掛金を毎月拠出するだけで自動的に退職金が積み立てられる仕組みです。給付は一時金のみで、運用は機構が一括して行います。
DBは将来の給付額があらかじめ約束されている仕組みであり、運用が予定利回りを下回った場合は会社が不足分を補填する義務を負います。一方、企業型DCは従業員自身が運用先を選び、自己責任で増やす仕組みを採用しています。役員も加入できる点や、掛金上限が月5.5万円と高めに設定されている点が特徴です。
自社の課題に合わせた「最適解」を見極めるための3つの判断軸
数ある制度の中から自社に最適なものを選ぶためには、明確な基準を持つ必要があります。具体的には以下の3つの判断軸で検討を進めます。
コストと財務効果:導入費用や維持費に対して、どれだけのキャッシュフロー改善(税金や社会保険料の削減)が見込めるか
対象者の設定と柔軟性:役員も加入できるか、従業員に加入の選択権を持たせられるか
将来の運用責任:会社が運用結果を保証するのか、従業員自身が責任を持つのか
例えば、「役員の退職金も同時に積み立てたい」「社会保険料の負担も軽減したい」という経営課題があれば、役員加入が可能で社会保険料削減効果のある企業型DCやDBが候補となります。一方、「導入コストをかけずに、最低限の退職金制度を整備したい」という場合は、ランニングコストがほぼゼロの中退共が適しています。
これらを自社の経営状況や目指す福利厚生の形と照らし合わせることで、最適な制度が見えてきます。判断に迷う場合は、専門家に相談し、自社の財務データを基にしたシミュレーションを行うことをおすすめします。
キャッシュフローと制度設計の自由度で見る3大退職金制度の徹底比較
この章でわかること
- 中退共・DB・企業型DCの導入コストと税・社会保険料の軽減効果の違い
- 役員加入の可否と対象者設定の柔軟性がもたらす経営メリット
- 「DB最強説」の真偽と、企業のゴールに応じた最適な制度選び
導入・ランニングコストと税・社会保険料の軽減効果の差
退職金制度を選ぶ際、費用の負担とそれに伴う財務メリットのバランスが重要になります。中退共は導入費用やランニングコストが無料・ほぼゼロである一方、軽減できるのは税金のみにとどまります。
対して、DB(はぐくみ基金等)や企業型DCは導入コスト(約10万〜30万円)や月額の維持費用(数万円)が発生しますが、税金だけでなく社会保険料の負担も軽減できるという大きな強みがあります。結果として、より大きなキャッシュフロー改善を見込める設計となっています。
例えば、30名規模の企業が企業型DCを導入した場合、初期コスト約20万円・年間維持費約30万円程度に対して、年間約126万円の社会保険料軽減効果が見込めます。差し引きで年間約96万円の純粋なキャッシュフロー改善が実現する計算です。中退共では税効果のみのため、社会保険料の負担軽減を求める企業にとっては、初期コストを払ってでもDBや企業型DCを選ぶ合理性があります。
役員加入の可否と対象者設定の柔軟性がもたらす経営メリット
制度の対象者を自社の実情に合わせてどこまで柔軟に設定できるかも、見逃せない判断基準です。中退共は役員の加入ができず、雇用形態ごとの一律適用が原則となります。
一方、DBと企業型DCは70歳未満であれば役員も加入可能であり、経営者自身の積立にも活用できます。特に企業型DCは、加入を希望する従業員だけが参加できる「任意加入(選択制)」を採用できるため、対象者設定の自由度が最も高い点が特徴です。
3大退職金制度の比較
| 評価軸 | 中退共 | DB(はぐくみ基金等) | 企業型DC |
|---|---|---|---|
| 役員加入 | 不可 | 可能(70歳未満) | |
| 軽減効果 | 税を軽減 | 税+社会保険料を軽減 | |
| 対象者の設定 | 雇用形態のみ(一律) | 柔軟に決められる(任意加入可) | |
| 想定利回り | 約1%(元本保証) | 約0.2〜0.3%(元本保証) | 約3〜7%(自己責任) |
| 制度バランス | 安心感 | 安定感 | 自由度と将来性 |
Q:役員も加入できる制度を選ぶメリットは何ですか?
A(竹田): 役員報酬の一部を企業型DCやDBの掛金に振り替えることで、役員個人の所得税・住民税・社会保険料が大幅に軽減されます。中小企業では役員報酬の比重が大きいため、役員加入可能な制度を選ぶことで、会社と個人の双方で年間数十万円〜数百万円規模のコスト削減が実現します。
Q:選択制(任意加入)はどのような場面で活用できますか?
A(竹田): 例えば、若手社員は手取りを優先したい、ベテラン社員は将来の資産形成を重視したい――こうしたニーズの違いに柔軟に対応できます。会社が一律に加入を強制するのではなく、社員自身が選べる仕組みにすることで、納得感のある福利厚生として機能します。
「DB最強説」の真偽は?見据えるゴールによって変わる最適な制度選び
一部で「DBが最強である」という意見が聞かれますが、どちらが正しい・間違いという話ではなく、企業が「見ているゴール」の違いに過ぎません。
税金と社会保険料の軽減効果を最優先し、損のない安全性(元本保証)を重視する場合は、DB派の考え方が合理的です。一方、税や社会保険料の軽減に加えて社員の資産形成を促し、持続可能な制度によって将来的な定着率の改善を図りたい経営者には、企業型DC(DC派)が適しています。
つまり、「短期的なキャッシュフロー改善+元本保証の安心感」を求めるならDB、「中長期的な定着率の改善+社員の自律的な資産形成支援」を求めるなら企業型DC、というのが基本的な棲み分けです。自社の経営戦略と照らし合わせて選ぶことが、後悔のない制度導入につながります。
従業員の定着率の改善に直結!運用益非課税で育つ企業型DCの資産形成力
この章でわかること
- 預金と比べて15年で数百万円の差が生まれる非課税運用の威力
- 退職所得控除を活用した受取時の手取り額最大化の仕組み
- 社員の自律的な資産形成を支援することで実現する定着率の改善
預金と比べて15年で数百万円の差が出る非課税運用の仕組み
企業型DCの大きな魅力は、将来に向けた資産を育てる力にあります。給与として受け取ってから通常の預金や投資に回す場合、利息や運用益に対して税金がかかります。しかし、企業型DCの口座内で得られた運用益はすべて非課税となり、そのまま再投資されるため、複利効果で資産が大きく成長します。
例えば、15年間で合計900万円を積み立てた場合、単なる預金では900万円のままです。しかし、企業型DCを利用して年利3%で運用できれば約1,130万円へと成長し、5%であれば約1,290万円まで増えるシミュレーションとなります。預金と比較すると数百万円もの差が生まれる圧倒的な仕組みです。
退職所得控除を活用した受取時の手取り額の最大化
運用で大きく増やした資産を受け取る際にも、社員の手取り額を最大化する強力な優遇措置が用意されています。退職後に退職金として一時金で受け取る場合、「退職所得控除」という仕組みが適用され、税負担を大幅に軽減することが可能です。
給与として受け取ってから預金していた場合と比較すると、受取時の税金の差額は歴然です。運用益と税制優遇の掛け合わせにより、最終的に個人の手元に残る金額を最大化できます。
運用方法別の手取り額比較(15年・900万円積立)
| 運用方法(15年間) | 受取額 | 税金(概算) | 手取額 |
|---|---|---|---|
| 預金(DC導入なし) | 900万円 | 約230万円 | 670万円 |
| 企業型DC(3%運用) | 1,130万円 | 約60万円 | 約1,070万円 |
| 企業型DC(5%運用) | 1,290万円 | 約75万円 | 約1,215万円 |
預金で900万円を受け取った場合の手取りは約670万円ですが、企業型DCで5%運用ができた場合の手取りは約1,215万円となり、その差は約545万円にも達します。同じ金額を積み立てるなら、企業型DCの活用が圧倒的に有利であることが分かります。
会社が積み立て、社員が自ら運用を選ぶ「自律型」の福利厚生
企業型DCは、会社が毎月掛金を拠出し、社員ごとの専用口座に積み立てる福利厚生制度です。積み立てられた資金は、社員自身が用意された運用商品の中から自由に選択し、自己責任で運用を行います。
企業型DCの基本的な仕組み
| 会社が毎月の掛金を社員の口座へ拠出する |
| ↓ |
| 社員自身が自分の口座で運用商品を選択する |
| ↓ |
| 非課税の運用益と退職所得控除で手取りが最大化する |
このような社員主体の自律的な資産形成支援は、従業員に対して福利厚生面での大きな安心感を提供します。自らの資産が増えていく過程を実感できるため、企業に長く働く強力なインセンティブとなり、結果として定着率の改善という会社側のメリットをもたらします。
【導入事例】製造業A社(従業員25名)の場合
A社では従業員の早期離職に悩んでいましたが、選択制の企業型DCを導入したところ、30代〜40代の中堅社員から「将来の資産形成ができる」と高く評価されました。導入から3年後、離職率が導入前の半分以下に低下し、採用コストの削減と熟練技能の蓄積という二重のメリットを得ています。給与の一部を掛金に振り替える設計のため、会社側の追加コスト負担もほぼなく、無理のない形で福利厚生を強化できた事例です。
従業員15名・30名規模での社会保険料削減・最適化シミュレーション

この章でわかること
- 15名規模での掛金設定と年間450万円の掛金総額シミュレーション
- 30名規模での年間120万円超の会社負担分削減の具体例
- 選択制(給与振替)の活用で会社・個人双方が得られる総合メリット
【15名規模】役員と一般社員を組み合わせた掛金設定モデル
企業型DCを組織全体で導入し、給与の一部を掛金へ振り替える「選択制」を活用した場合、会社の社会保険料負担は大幅に削減されます。例えば、役員2名、管理職などの上位層1名、一般社員3名、パートなどの一般層9名の計15名規模の企業を想定します。役員が月額5万円、上位層が5万円、一般社員が3万円、一般層が1.5万円を選択したとします。
この場合、年間で合計450万円の掛金が拠出される計算になります。これらの掛金は全額が社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額から外れるため、会社の社会保険料負担は年間約67万円軽減されます。役員個人の負担軽減分も加えると、年間約85万円規模のキャッシュフロー改善が実現する試算です。
【30名規模】年間120万円超の会社負担分を削減する具体例
規模を拡大し、30名(役員3名、上位層2名、一般社員5名、一般層20名)の企業でシミュレーションしてみましょう。15名規模と同様の掛金設定(月額1.5万〜5万円)で全員が選択した場合、年間の掛金総額は840万円に達します。この掛金は全額が社会保険料の算定基礎から外れるため、会社の社会保険料負担額は年間約126万円も軽減される計算です。これは実質的な人件費の削減効果と言えます。
30名規模企業のシミュレーション
| 対象層(30名規模) | 人数 | 月額掛金 | 年間掛金総額 | 会社負担軽減額 | 本人負担軽減額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 役員 | 3名 | 50,000円 | 1,800,000円 | 270,000円 | |
| 上位層(管理職等) | 2名 | 50,000円 | 1,200,000円 | 180,000円 | ― |
| 中間層(一般社員) | 5名 | 30,000円 | 1,800,000円 | 270,000円 | ― |
| 一般層(パート等) | 20名 | 15,000円 | 3,600,000円 | 540,000円 | ― |
| 合計 | 30名 | ― | 8,400,000円 | 約1,260,000円 | 約270,000円(役員分) |
【導入事例】サービス業B社(従業員30名)の場合
B社では、人件費の増加と社会保険料負担の重さに頭を悩ませていました。選択制の企業型DCを導入し、役員から一般層まで全員が掛金を選択した結果、初年度から年間約126万円の会社負担分が削減されました。削減した資金を新規採用の広告費に充てたところ、優秀な人材を3名確保でき、業務効率も向上。社会保険料の適正化が事業成長の原資となった好事例です。
適切な給与振替(選択制)の活用で得られる企業全体でのメリット
このように、選択制の企業型DCは、会社が新たなコストを捻出することなく、既存の給与を再配分する形で導入できるのが大きな特徴です。結果として、会社側の社会保険料が削減されるだけでなく、掛金を選択した役員や従業員個人の税金・社会保険料負担も同時に軽減されます。
30名規模のシミュレーションでは、会社の軽減額(約126万円)と役員個人の軽減額(約27万円)を合わせた総合的なコスト削減効果は年間約153万円に上り、企業全体での強力なキャッシュフロー改善をもたらします。さらに、削減された資金は事業投資・採用コストの削減・賞与の拡充など、自由な用途に充てられるため、経営の柔軟性が大きく向上する点も見逃せません。
はぐくみ基金(DB)と企業型DCで迷った時に確認すべき運用リスクと注意点
この章でわかること
- 元本保証(DB)と自己責任(DC)が将来の受取額に与える影響
- 運用リスクを会社が負うか従業員が負うかの根本的な違い
- 税効果重視か資産形成重視か、企業のゴールに応じた最終判断
元本保証(DB)と自己責任(DC)がもたらす将来への影響
退職金制度を選ぶ際、将来の受取額がどのように決まるかという運用面の違いは重要です。DB(はぐくみ基金など)は元本が保証され、予定利率(約0.2〜0.3%)に基づいて手堅く積み立てられます。受取額が確約される安心感がある反面、大きく増えることはありません。
一方、企業型DCは従業員自身が運用先を選び、自己責任で運用を行います。想定利回りは約3〜7%とされ、長期間の非課税運用によって退職金が大きく成長する将来性を持っています。短期的な安全性を取るか、長期的な成長性を取るか――この基本的な性格の違いが、両制度の最大の分岐点です。
参考:確定給付企業年金の資産運用力向上のための取組|厚生労働省
運用リスクを会社が負うか、従業員が負うかの重大な違い
運用の仕組みの違いは、万が一の際のリスクの所在に直結します。DBの場合、予定利回りを下回り積立不足が発生した際は、会社が不足分を補填(追加拠出)する義務を負います。想定外の支出は将来の財務を圧迫する要因となります。
対して、企業型DCは従業員自身が運用責任を負うため、会社が後から穴埋めを求められることは一切ありません。毎月の掛金を拠出した時点で会社の財務的義務は完了し、経営リスクの回避が図れる明確な構造となっています。
運用リスクと将来性の比較
| 項目 | DB(はぐくみ基金等) | 企業型DC |
|---|---|---|
| 運用の特徴 | 元本保証(低リスク・低リターン) | 自己責任(リスクあり・リターン期待大) |
| 想定利回り | 約0.2〜0.3% | 約3〜7% |
| 運用リスクの所在 | 会社(不足時の補填義務あり) | 従業員(会社への追加負担なし) |
| 将来性への影響 | 確約された一定額を受け取る | 運用次第で個人の資産が育つ |
Q:DBで積立不足が発生した場合、会社はどれくらいの負担を求められますか?
A(竹田): 不足額の規模や財政状況によって異なりますが、数百万円〜数千万円規模の追加拠出を求められるケースもあります。中小企業にとっては、突発的なキャッシュアウトが資金繰りを大きく圧迫する要因となり得るため、DBを選ぶ際は将来の財務リスクも含めた慎重な判断が必要です。
Q:企業型DCで従業員が運用に失敗した場合、会社が責任を問われますか?
A(竹田): いいえ、会社は責任を問われません。企業型DCは「会社が掛金を拠出し、運用は従業員が行う」という制度設計のため、運用結果は従業員自身に帰属します。ただし、会社には従業員向けの「投資教育」を行う努力義務がありますので、適切な情報提供は欠かせません。
企業の目指すゴール(税効果重視か、資産形成重視か)の再確認
どちらの制度を選ぶべきか迷った際は、自社が制度導入によって何を実現したいかを再確認してください。キャッシュフロー改善(税や社会保険料の削減)を確実かつ安全に進めたい場合は、元本保証のDBが適した選択肢となります。
一方で、会社側の運用リスクを排除しつつ、従業員の資産形成を後押しすることで、中長期的な採用コストの削減・定着率の改善を実現したい場合は、企業型DCが最適解となります。最終的には、自社の経営戦略・財務状況・人材戦略の3つの軸から、どちらが自社にフィットするかを総合的に判断することが、後悔のない制度導入につながります。
退職金制度の導入に向けた具体的な行動フローと専門家活用のメリット
この章でわかること
- コスト分析と最適な制度設計の策定が成果を左右する第一歩
- 各種規程の整備から従業員向け説明会・金融教育までの実施フロー
- 顧問契約不要で利用できる制度導入コンサルティングの活用法
現状のコスト分析と最適な制度設計の策定
企業型DCの導入を成功させるためには、まず自社の現状を正確に把握し、最適な制度設計を行うことが不可欠です。具体的には、役員や従業員の給与データを基に、税金や社会保険料の効果検証(コスト分析)を実施します。その上で、誰を対象とするか、掛金のルールをどう設定するかといった具体的な制度設計を行います。
こうした初期段階での綿密なシミュレーションと設計が、将来的な会社のキャッシュフロー改善の成果を大きく左右します。例えば、対象者の選定を誤れば期待した社会保険料軽減効果が得られず、掛金ルールが曖昧だと従業員間で不公平感が生まれる可能性もあります。専門家の知見を取り入れながら、自社にとって最適な設計を導き出すことが重要です。
各種規程の整備から従業員向け説明会・金融教育の実施まで
制度設計が完了した後は、関連する社内ルールの整備が必要となります。具体的には、各種規程の整備を行うことが求められます。また、企業型DCは従業員自身が自己責任で運用を行う制度であるため、制度の仕組みやメリットを正しく理解してもらうための従業員向け制度導入説明会の実施が欠かせません。
さらに、導入後も運用に関する従業員向け金融教育の支援を継続的に行うことで、社員の自律的な資産形成が促進され、結果として会社の定着率の改善へと繋がります。
企業型DC導入の3ステップ
| ステップ | 実施内容 |
|---|---|
| 1. 効果検証と制度設計 | 税金や社会保険料の軽減効果の検証および、自社に最適な制度設計の策定 |
| ↓ | |
| 2. 社内ルールの整備 | 制度導入に伴う各種規程の整備 |
| ↓ | |
| 3. 社内への周知と教育 | 従業員への制度導入説明会の実施と、金融教育の支援 |
顧問契約不要で依頼できる制度導入コンサルティングの活用
これまで挙げた専門的なフローを自社のみで完結させるのは、多くの時間と労力を要します。そこで活用したいのが、社会保険労務士などの専門家による「企業型DC 制度導入コンサルティング」です。
グロウライフ社会保険労務士法人では、効果検証から制度設計、各種規程の整備、そして説明会や金融教育の支援までをサポートしています。顧問契約不要で依頼することができ、コンサルティング報酬は10万円からとなっています(説明会・金融教育などは別途)。専門家の知見を活用することで、自社にとって間違いのない最適な退職金制度をスムーズに導入することが可能になります。
退職金制度の導入は、企業の中長期的なキャッシュフロー改善と人材戦略を左右する重要な経営判断です。自社のみで判断するには専門知識が必要な領域だからこそ、第三者の視点を取り入れることで、失敗のリスクを最小化できます。
まとめ|自社に最適な退職金制度の選択で、年間150万円規模のキャッシュフロー改善を実現しよう

退職金制度の選択は、中小企業のキャッシュフロー改善と人材戦略を左右する重要な経営判断です。中退共・DB(はぐくみ基金等)・企業型DCにはそれぞれ特徴があり、自社の経営課題に合わせて最適な制度を選ぶ必要があります。特に企業型DCは、税金だけでなく社会保険料の負担も軽減できる強力な手段として、30名規模の企業で年間約150万円のコスト削減効果が見込めます。さらに、従業員の自律的な資産形成を支援することで、定着率の改善という長期的なメリットももたらします。
この章でわかること
- 今すぐ実行できる3つのアクション
- 自社の役員・従業員の給与データを基に、社会保険料の現状を把握する
- 中退共・DB・企業型DCのうち、自社のゴール(税効果重視か資産形成重視か)に合う制度を仮選定する
- 社会保険労務士などの専門家に、効果検証と制度設計のシミュレーションを依頼する
退職金制度の導入は、専門知識が必要な領域です。グロウライフ社会保険労務士法人では、顧問契約不要で制度導入コンサルティングをご提供しています。まずはお気軽にご相談ください。
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